認定審査会に伝わる特記を書く|調査項目「麻痺」「拘縮」の特記の書き方

読み手に伝わる「麻痺」「拘縮」の特記の書き方を考える!

麻痺、拘縮の状態をどのように表現するか

麻痺や拘縮の項目で「ない」以外の選択をした際、具体的にどのように特記に記載すれば良いのか迷うことはないですか?

市町村によっては確認動作の試行を行ったうえで具体的な角度も記載するよう指導しているところも多いようです。

望ましい角度の表現は?

市町村のホームページの認定調査に関するサイトなどを見ると,介護の手間に関する特記事項の書き方の指導や具体例が示されていますが、麻痺、拘縮に関しては統一された記載方法などはありません。

では、実際に具体的な角度などを記載するとしたらどのようの表現するべきでしょうか?

参考のために、>調査項目を読み解く4月 麻痺等の有無<でも一部紹介しましたが、医学的な上肢、下肢の可動域の表現を以下に紹介します。

図1 上肢(肩関節)の可動域
図2 下肢(股関節)の可動域

                      

 図3 下肢(膝関節)の可動域

 

 

図4 膝関節の角度

 


上肢の記載について

上肢の確認動作は、肩関節の屈曲と外転ができるかで評価・選択します。

特記記載の際は特に専門用語にする必要はないので「腕を前に上げる」「腕を横に上げる」と表現して問題ないと思います。

腕を前、横に肩の高さまで自分で上げることが出来れば「ない」を選択し、出来なければ「右・左」を選択し、「横に約70度程度までしか上げられない」などと具体的な状況を特記事項に記載します。

拘縮の場合は、上肢に関連した関節で可動域制限があればその関節を選択し、可動域制限の状況を具体的に記載します。

下肢の記載について

下肢の確認動作は、股関節と下腿(膝から先)の動きである膝関節の動きで評価します。

確認動作の試行は下記のいずれかで行い、評価します。

①椅子での座位になれる場合は、椅子に座って股関節をほぼ直角に曲げた状態で、膝を伸ばし下腿をほぼ水平に伸ばしたまま静止できるか

②椅子に座位になれない場合は、仰向けに寝た状態で、膝の下に枕等を入れて股関節を20~40度に屈曲させ、その状態で膝を伸ばし下肢全体を真っすぐにして静止できるか

③座位かどうかに関係なく、膝関節に可動域制限があり、膝関節を真っすぐにできない場合は、他動的に最大限動かせる高さまで自分で下腿を上げて静止できるか

①~③の確認動作ができれば麻痺「なし」、角度や静止時間が要件を満たさなければ麻痺「あり」と判断します。

 

具体的な角度の表現方法について

>大腿(股関節)の角度の表現

体幹の中心線を真っすぐ下肢に延ばして、その線が直線になっている状態が股関節屈曲0度で、椅子の座位での確認動作の場合は屈曲90度、仰向けに寝た状態での確認動作で膝の下に枕などを入れた場合は屈曲20~40度程度になります。

仮に屈曲約60度での可動域制限がある場合は「股関節の可動域制限があり、約60度程度屈曲した状態から曲げられない」と表現するのが一般的で、特記事項を読む側も状況が理解できます。

>下腿(膝関節)の角度の表現

繰り返しになりますが、膝の場合は麻痺等の有無の角度と表現が異なります。

その理由は、麻痺等の有無の基本姿勢が医学的な可動域を評価する基本姿勢と異なるからです。

麻痺等の有無では椅子に座った座位が基本姿勢となっており、膝をほぼ90度に曲げた状態から「どの程度膝を伸ばせるか」で評価しています。ですから約30度の伸展の可動域制限がある場合「可動域制限があり、膝から先は約60度までしか上がらない」などの表現でも良い訳です。

他方、拘縮の有無では膝をまっすぐ伸ばした状態が基本姿勢となっており、まっすぐ伸ばした状態からどの位曲げられるかで評価します。

ちなみに医学的には膝関節をまっすぐ伸ばした状態が0度であり、直角に曲げた状態は90度の屈曲です。

麻痺等の有無では床からの角度を記載してもOKですが、拘縮の有無では医学的に採用されている角度での記載が必要です。

例えば、下の図5のように膝を30度屈曲した状態での可動域制限(伸展制限)がある場合、拘縮の有無の特記では「足を60度程度までしか上げられない」と記載するのではなく、「膝関節は伸展制限があり約30°曲がった状態から伸ばせない」または「約30°の屈曲拘縮がある」と記載し、屈曲制限の場合は「膝は約○○度までしか曲がらない」と記載したほうが審査会委員の方々には状況が伝わると思います。

図5 膝の可動域制限

なお、可動域制限の角度は何度をもって"軽度・著しい"と評価するべきかについて本サイトの「調査項目を読み解く4月」で詳しく触れていますのでご一読ください。

 

このコーナーは先月から新しく開始になりました。

自分の知見のもとに書いていますので、違う意見をお持ちの方もおられると思います。

このコーナーがより良い特記記載の参考になればと願っています。