今月の話題7月|「爪きり・整髪」は1次判定の要介護度にどの程度影響するか

介護負担が少ない「1-11つめ切り」「2-9整髪」の選択肢は1次判定結果にどう影響するかを検証する。

「爪きり・整髪」の介助は、入浴時の一連の介助として行われることが多い

要介護度が軽度の場合は1‐11爪きり、2-9整髪は介助されていない場合が多く、また、介助が必要な場合でも入浴後の一連の介助行為として行われている場合が多いと思います。そしてどちらも食事や移動などの介助に比べ介護負担はそれほど大きなものではありません。

1次判定で要介護度の判定基準となる「要介護認定等基準時間」(以下認定基準時間)を算出する8つの樹形モデルでは、爪切りが「機能訓練関連行為」の樹形モデルの分枝に単独で1回登場しますが、それ以外の樹形モデルには単独では登場しません。整容に至っては全ての樹形モデルに単独では登場しません。
爪きり・整容ともに、前述の爪きり以外は各群ごとの合計ポイントである「中間評価項目得点」として樹形モデルの分枝に関与している状態です。

今回、‶検証シリーズ第2弾”として、他の介助の方法の項目と比較して介護量の少ない「爪きり、整容」が1次判定でどのように評価されるのかをシミュレーションしてみました。

1-11爪きり、2-9整容の選択肢ごとの認定基準時間のシミュレーション

シミュレーションは非該当~要介護3までの6段階で、各3ケース(非該当のみ2ケース)計17ケースを使って行い、基となるケースは実際に1次判定されたものを使用しました。
それぞれのケースは出来るだけチェック項目が重複せず、同じ要介護度でもできるだけ認定基準時間が離れたケースを用いました。

17ケースの1次判定画像

ケースごとの認定基準時間

17ケースのそれぞれの1次判定結果の認定基準時間を図表にしました。(図表1)
図表1では選択肢を変更したことで認定基準時間が変化した部分を赤字にしています。

図表1

 

統計

できる⇒全介助にした場合の認定基準時間の違い

最小値 爪切り ‐1.6分 整髪 -5.1分
最大値 爪切り +4.3分 整髪 +7.0分

平均値 爪きり +1.4分  整髪 +1.1分

中央値 爪切り:+1.6分  整髪 ±0分

結果の分析

比較

1.「爪きり」

1.選択肢「介助されていない」⇒「一部介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは全ケーのうち1ヶ―スのみ(6%)
2.選択肢「介助されていない」⇒「全介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは全ケースのうち11ケース(65%)
3.「介助されていない」を選択し、1次判定が非該当、要支援1・2であった8ケースでは、「全介助」とした場合は全ケースで認定基準時間が変わった(100%)
4.「介助されていない」を選択し、1次判定が要介護1~3であった9ケースでは、「全介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは3ケース(33%)

2.「整髪」

1.選択肢「介助されていない」⇒「一部介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは全ケーのうち2ヶ―ス(12%)。
2.選択肢「介助されていない」⇒「全介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは全ケースのうち8ケース(47%)。
3.「介助されていない」を選択し、1次判定が非該当、要支援1・2であった8ケースでは、「全介助」とした場合は2ケースで認定基準時間が変わった(25%)。
4.「介助されていない」を選択し、1次判定が要介護1~3であった9ケースでは、「全介助」とした場合に認定基準時間が変わったのは6ケース(67%)。

3.爪きり、整容共通

選択肢「介助されていない」⇒「全介助」とした場合に認定基準時間が少なくなるケースが爪きり、整容ともに1ケースずつあった。これは一群の身体機能・起居動作の選択肢の組み合わせによる特殊例と思われます。

傾向

1.爪切り・整髪ともに選択肢が「一部介助」の場合は「介助されていない」を選択した場合と認定基準時間はほとんど変わらない。
2.1次判定の要介護度が軽度(非該当、要支援1・2、要介護1)の場合は、爪きりの選択肢による影響が大きく、整容の選択肢の影響は少ない。
*爪きりでは、「介助されていない」⇒「全介助」に変更した場合、軽度者11ケースのうち3ケースが1次判定の要介護度が1段上がった。(非該当⇒要支援1、要支援1⇒要支援2×2)整髪では変化なし。
3.1次判定の要介護度が中程度(要介護2・3)の場合は、整髪の選択肢による影響が大きく、爪きりの選択肢の影響は少なくなる。
*爪きり、整髪共に「介助されていない」⇒「全介助」に変更した場合でも1次判定の要介護度に変化はなし。

考察

爪きり、整髪共に「介助されていない」~「全介助」の平均的な認定基準時間の差は1∼2分であり、同じ認定基準時間の幅が大きい「食事」「排泄」「移動」などに比べるとその差は少ないことが分かります。
こられのことから爪きり、整髪ともに選択肢の違いによる1次判定への影響は少なく、選択肢によって要介護度が変わる可能性は非常に少ないと考えます。

 

いかがだったでしょうか?
私自身、訪問調査に行って爪きりについて聞くと相手に「そんなこと介護度に関係あるの?」と言われたり怪訝な顔をされたり、整髪も特に高齢男性では気にしていない方が多かったりで、どちらの項目もあまり質問に気乗りのしない項目でした。

今回のシミュレーション結果では、1次判定の介護度への影響は少ないものの、1次判定結果の軽度者の場合は爪きり、中程度の場合は整髪にある程度影響されることが分かりました。
現実的には1次判定が軽度者の場合はほとんど介助なしで爪きりしており、また、中程度者では整髪介助によって認定基準時間が1∼2分増えても介護度に影響なかったりする場合が多く、やはり全体的に介護度には大きく関与していない印象です。

しかし基準時間が隣の介護度と3分以内であったりすれば介護度が変わりますから、やはり、確認と聞き取りをキチンとしたいものです。

次回は検証シリーズ第3弾「外出頻度は1次判定にどう関わるのか」をシミュレーションする予定です。