話題|認定調査項目「短期記憶」の評価方法の実態

調査項目の「短期記憶」を認定調査員はどんな方法で評価選択しているのか?

調査員テキストで推奨されている調査方法

基本調査項目3-4短期記憶の調査方法は、「対象者本人に“面接調査直前に何をしていたか”を質問し、していたことを把握しているかどうかを評価する。質問での確認が難しい場合は『3品テスト』を行い、その結果で評価する」となっています。

選択肢の選択方法

本人からの聞き取りと日頃の状態を知る介護者(同席者)からの聞き取りを行い、より頻回な状況に基づいて選択を行うこととなっています。

市町村が推奨する調査方法には若干の違いがある

1.質問内容

対象者本人に対して「調査直前に何をしていたか」を質問することはどの市町村も同じですが、更に「食事をしていた場合は何を食べたかを聞く、テレビを観ていた場合はどんな内容だったかを聞く」など、していた事の内容も質問すると指導しているところがあります。

つまり、「していた事を把握しているかで評価する」市町村と、「していた事とその内容を把握しているかで評価する」市町村の2パターンがあります。

2.3品テストについての考え方

各市町村ともに①3品テストは必須ではない②面接調査直前に何をしていたかの質問での判断が難しい場合は3品テストを行う③3品テストのやり方、の3点は共通しています。
しかし「したことは覚えているが内容は覚えていない」場合も3品テストを行うことを推奨して市町村があります。

3.市町村が指導する選択肢の選択方法

対象者が質問に正答し同席者も短期記憶に問題はないとしている場合、あるいは対象者が質問に答えられず同席者も短期記憶に問題があるとしている場合、調査員は選択肢の判断に迷うことはないと思われます。
しかし「対象者が質問に正答し、同席者が短期記憶に問題があるとしている場合」は選択肢の判断に迷うと思います。
この場合のように判断に迷った時も3品テストを行うことを推奨している市町村が多く見られます。

そこで、認定調査を行っている現役ケアマネの方々に、3品テストに関するアンケートを行いました

SNSで「3品テストの実施状況と評価」についてのアンケートをとりました。

SNSでのアンケートは以下の2つ。

質問1:どのような場合に3品テストを行っていますか?

A.同席者がいても確認の意味で毎回3品テストを行う

B.本人の答えと、同席者から聞き取った日頃の状況が食い違う場合に3品テストを行う

C.同席者がいれば3品テストは行わない

質問2:質問1のアンケートでAまたはBと回答した方に対し、3品テストの結果と同席者からの聞き取り結果が一致しない場合の選択肢はどうしていますか?

①3品テストの結果で選択する

②同席者からの情報で判断する

結果

質問1

 

質問2

アンケートでは、‟同席者がいても確認の意味で毎回3品テストを行っている方が圧倒的に多く、また最終的に3品テストの結果で選択肢を選択している方が多い” という結果でした。

3品テストを毎回行っている調査員が多い理由は?

アンケート回答の75%のケアマネが、わざわざ手間のかかる3品テストを行っている理由は以下の2点と推察されます。

1.対象者への質問・解答だけでは、していた事を把握しているか判断が難しい。

調査の現場で「今まで何をしていましたか?」と聞くと、在宅では「何もしていない」「寝ていた」「TVを観ていた」などと、大雑把な答えが返ってくる場合が多々あります。
実際そうなので正答なのですが、これを「できる」と自信をもって評価するのは抵抗があります。
そもそも、普段の生活では明確に「できる」「できない」を判断できるエピソードやイベントは少ないのです。
他方、施設などでは在宅に比べ大なり小なり何らかのイベントがありますから在宅に比べ判断しやすい傾向があります。

いずれにしても調査の直前~1時間程の間に、「できる/できない」の判断が可能な行為や行動を対象者がしている場合は少ないのです。

そのために3品テストを行って評価することになると思われます。

2.対象者への質問で「できる」と判断しても、同席者から「短期記憶に問題がある」と言われることが多く、その場合の判断材料として3品テストを使っている。

この本人と同席者の食い違いは、対象者への質問が「ついさっきしていた事」を尋ねるのに対し、同席者は「ついさっきの事を含めた日頃の対象者の言動」を言っていることから来ていると思われます。

対象者が「していた事」を正答しても、同席者から短期記憶に問題があると聞き取った場合に短期記憶をどう評価すべきか悩ましい状況です。

最終的には3品テストを行って判断することになっていると思われます。

まとめ

1.調査員テキストでは、できる/できないの評価を「していた事」を正答できるかで判断することになっているが、市町村によっては「していた事の内容」も含めて判断するように指導している場合がある。

2.対象者本人への質問・解答だけでは、本人が「直前に何をしていたか」を把握しているか判断するのは難しい場合が多い。そのために3品テストを全員にしている人が多い。

3.対象者本人が「直前に何をしていたか」を把握していたとしても、同席者から「日頃短期記憶に問題がある」と聞き取るケースが多く、最終的な「できる/できない」の判断を3品テストの結果でしている人が多いと推察する。

今回の話題が参考になれば幸いです。