話題|介護認定審査会簡素化の状況

審査会簡素化導入の背景

要介護・要支援認定者数は増大の一途をたどっており、それによって市町村などの保険者の事務量も増大し、要介護認定の申請提出30日以内での認定は困難になっています。

そこで導入されたのが、一定の条件に合致するケースでは認定審査会に諮ることなく、コンピューターソフトでの1次判定をそのまま2次判定結果とするという「認定審査会の簡素化」です。併せて認定有効期間を36か月まで延長する「更新認定の有効期間延長(それまでの最長24か月から36か月に)」も導入されました。

実際に審査会の簡素化と認定有効期間36か月はセットになっているようです。(注:この認定有効期限は2021年4月から最長48か月に再延長されました。)

簡素化の要件

改めて簡素化の要件を見てみると、
【要件1】第1号被保険者であること
【要件2】更新申請であること
【要件3】コンピュータ判定結果の要介護度が、前回認定結果の要介護度と一致していること
【要件4】前回認定の有効期間が 12 か月以上である こと
【要件5】コンピュータ判定結果が要介護 1 または要支援 2 の者の場合は、今回の状態安定性判定ロジックで「安定」と判定されていること
【要件6】コンピュータ判定結果の要介護認定等基準時間が「一段階重い要介護度に達するまで 3 分以内(重度化キワ 3 分以内)」ではないこと

保険者判断の付加要件

またこの要件については、各保険者が独自の要件を付加することを可能としています。

実際に各保険者によって付加されている要件例。
①要支援2または要介護1は簡素化の対象外
②特定の介護度以上のみ簡素化の対象(例:要介護3以上 等)
③がん末期者は簡素化の対象外
④認知症自立度II以上の蓋然性のある場合は簡素化の対象外
⑤要介護認定等基準時間によって対象・対象外を決定
⑥審査会委員の事前確認や申請者の同意等のプロセスを経て対象・対象外を決定
⑦心身の状態が不安定な場合は簡素化の対象外

特に①の要件を付加している市町村は多いようです。

この「認定審査会の簡素化」と「認定有効期限を最長36か月まで延長可」の2つの業務簡素化は2018年(H30年)4月からの導入となりましたが、導入の可否と開始日は保険者の判断となっていました。

簡素化の実施状況

R2年3月時点でのこの2つの業務簡素化の実施率は以下のようになっています。

    出典:要介護認定業務の実施方法に関する調査研究事業報告書 みずほ情報総研株式会社

業務簡素化しない理由について

業務簡素化を実施していない理由は以下のようなになっています。

実施していない具体的な理由

・現在のところ、件数的にそれほど簡素化の必要性がない
・平成31年4月より合議体数を増やしたことで一回あたりの件数が減ったため。
・簡素化に該当する件数が少なく、あまり時間の短縮にはならないため
・業務簡素化のための資料作成など、逆に業務が簡素化されないのではないかと懸念している。
・周辺地域を参考しにして広域で検討予定
・審査判定にあたっては簡素化対象のものであっても調査票・医師意見書を審査会委員に提示する必要があるので、簡素化を行った場合2種類の審査会資料が必要となり事務が煩雑になる。また、簡素化を行った場合、審査会自体の時間が多少短縮されるメリットは考えられるが、審査会委員は審査会自体より資料の事前読み込みに多くの時間を割いている状況がある。
・独自要件を検討中
・県内で実施している自治体もなく、先駆けて実施を行うほどのメリットが見出せなかったため。
・審査会が10市町村による一部事務組合で実施されているため、他の市町村との調整が必要なため
・事務局としての説明義務があるため要件3.4.6.の理由を含み、簡素化しない方針としている。
・二次判定結果までの平均が30.1日なので、現在のところは簡素化の必要はないと考えている。

簡素化導入後の認定情報の実際の表記

1.簡素化されたケースの表記

 
2.簡素化されないケースの表記:要件3が不一致のケース

 

 
簡素化されないケースの表記:要件4を満たしていないケース

 

 

簡素化されないケースの表記:要件5を満たしていないケース

簡素化されないケースの表記:要件6に該当

3.要件をすべてクリアーしているにも拘らず「簡素化不可」となっているケース(マスクされていますが更新申請です)。

 

 

4.判定ソフトでは「簡素化可」となっているもののなぜか簡素化されないケース。

 

審査会簡素化の判断はコンピュータソフトによって行われ、その結果がこのように表示されます。

まとめ

要介護・要支援認定者数は増え続けており、それに伴う保険者の事務量も増大しています。要介護認定の申請提出30日以内での認定も困難になっている状況です。

そのため、審査会の簡素化や認定有効期限延長などの対応がペーパーレス化と共に必要となり、各保険者の判断で実施されています。しかし、いろいろな理由からR元年度末時点では実施率は40%に達していないようです。

ちなみに、私が継続して調査委託を受けている3つの市に関していえば、2市は簡素化実施、1市については検討中とのことでした。

実施していない理由として

1認定情報は審査会委員が実際に目を通すべきと考えている。
2審査会簡素化の妥当性に疑問がある。
3審査しないことが申請者への不公平・不利益につながる可能性がある。

を挙げています。

同時に、簡素化を実施しない具体的な理由は「申請件数が多くない」「簡素化に該当する件数が少ない」「合議体を増やすことで解決できた」などで、比較的申請数が少なく審査状況がひっ迫していない保険者が実施していないと推察されます。

現在、ほとんどの保険者では審査会資料は事前配布されており、その中には簡素化対象者のリストも入っています。審査会委員は事前配布された簡素化対象者の情報に目を通し、審査が必要と考える場合は通常の審査が行われることになっています。

判定ソフトは入力された複数の条件をクリアーしたものを「簡素化可」と判定しており、当然ながら信頼性は高いのですが、今回確認した結果では審査会事務局でも判定ソフトの結果を説明できないケースがあり(今回確認では判定理由が判らないものが約5%あった)、何らかの手入力が行われた結果ではないかと言う結論になりました。

簡素化の目的を考えると将来的にはチェックされることなく自動的に更新される可能性が高く、この点が今後の課題ではないかと考えます。