認定調査項目を読み解くPart2|生年月日や年齢を言う・短期記憶

生年月日や年齢を言う

1.項目の定義

「生年月 日や年齢を言う」 能力を評価する項目です。
ここでいう 「生年月日や年齢を言う」 とは、生年月日か年齢かのいずれか一方を答えることができることです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・生年月日は実際と数日のずれは 「できる」 とします。
なお 「数日」 の具体的な定めはありませんが、生年月日は計算などの必要のない「意味記憶」ですから間違えること自体「ほぼできない」状態であると言えます。

・年齢は2歳までの違いは「できる」とします。これは数え年で答える方がいるためです。

・調査日の状況と介護者から聞き取りした日頃の状況が異なる場合は、 一定期間 (調査日より概ね過去1週間) の状況においてより頻回な状況に基づいて選択します。 その場合は具体的な状況を特記事項に記載します。

・失語などで言葉での返答ができない場合は筆談が良いと思いますが、筆談が出来る状況ではない時は年齢ではなく生年月日を聞くようにします。そしてあえて違った数字を言って、対象者が訂正できるかで判断します。

4.ポイント

生年月日は長期記憶の意味記憶に分類されるもので時間が経過しても変わりませんが、年齢は毎年加算されていきますから記憶力の他に計算力が必要になります。実際の訪問調査でも「年齢は間違うが生年月日は正答する」という方が多くいます。

もし調査の際に「年齢は正答したが生年月日を間違える」という方がいたら、少し間をおいてもう一度年齢を確認することをお勧めします。

前回の「生年月日や年齢を言う」の記事

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由及び特記のポイント

ケース選択された選択肢選択理由と特記のポイント
生年月日は2日違っており、 年齢は5~6歳違って答えるできる生年月日については、テキストにあるように数日間のずれのためできるを選択しても良いと思われます。
質問した直後は生年月日を答えられず、年齢も10歳違って答えたが、調査終了ごろに生年月日を思い出して正答できたできる認定調査は非日常的な出来事であり、 即答できない場合があるため調査時間内に正答できた場合は「できる」を選択します
生年月日は答えられない。年齢は88歳だが「80代後半」と答えたできない具体的な年齢が言えなければ「できない」と判断します
生年月日を答えるも日にちが間違っていた。年齢は答えられない。できない生年月日は数日間のずれの場合は「できる」と判断することになっています。なお 「数日」 の具体的な定めはありませんが、生年月日は年齢と違い、計算の必要のない「意味記憶」ですから間違えること自体「ほぼできない」状態であると言えます。しかし念のために何日のずれだったのか記載したほうがよいでしょう。

 

 

短期記憶

1.項目の定義

「短期記憶」(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)能力を評価する項目です。

ここでいう「短期記憶」とは、面接調査日の調査直前にしていたことについて、把握しているかどうかのことです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・調査直前から1~2時間ぐらい前のことを覚えているかを確認し選択しま すが、質問に対する返答のみでの選択は行わず、介護者や家族から普段の 様子を聞き取り、より頻回に見られる状況から選択します。

・質問内容に決まったものはありませんが、「何をしていたのか」が分かればよく、「どんな内容であったか」を聞いてその正誤で判断するものではありません。
<不適切な例>
:食事の献立は何でしたか?
:観ていたTVの内容はどんなでしたか? etc…

・短期記憶と4群の「ひどい物忘れ」の相関はありますが、定義が異なる点 に留意してください。

・調査日の状況と介護者から聞き取りした状況が異なる場合は、一定期間(調 査日より概ね過去 1 週間)の状況においてより頻回な状況に基づいて選択します。

・訪問時の質問で確認が難しい場合や、普段の様子を知る同席者等がいない場合は「3品テスト(下記参照)」を用いて評価することが推奨されています。

-3品テスト検査方法-

「ペン」「時計」「視力確認表」等の関連のない物3品を提示し、何であるかを説明しながら覚えてもらい、これらを見えない所にしまいます。そして「後で何があったかを答えてもらいます」と話をします。

その後は別の項目の質問などを行い、5分以上経過してから、先に提示した3品のうち2品を出し、出ていないものが何であるかを答えらてもらいます。

なお、視覚的に把握できない場合は、3つの物を口頭で説明する等、調査対象者に質問の内容が伝わるように工夫して行います。また、提示してから時間が経ちすぎるとテストとしての意味が低くなるので5∼10分以内で答えてもらうようにします。

<ポイント>
提示するものは3品とも関連のないもので、かつ対象者が理解できるものとします。携帯電話、スマホなどは使わない方が良いでしょう。ちなみに私は ①おもちゃの魚 ②消防車(トミカ) ③鍵(南京錠)を使用しています

ヒントについては賛否がありますが、ヒントのレベルで反応が違うことが考えられるので、ヒントは出さないこととします。

4.ポイント

・実際の調査では、認知症のある方でも訪問調査の直前にした食事や外出などは覚えている場合が多く、また、特別なことをしていない場合は「何もしていなかった」と答える方もいます。このため日頃の状況を介護者から聞き取ることは不可欠です。

しかし、介護者でも直前の事・ついさっきの事を対象者が覚えているかは判断できない場合があります。この場合は3品テストで判断することになります。

・留意点にも書きましたが次のような場合は「できないと」判断される確率が高くなりますので注意が必要です。

①何をしていたかではなく、していたことの具体的な内容の正誤で判断する。
②3品テストを行い、その結果を優先する。
③4群の「ひどい物忘れ」が「ある」場合は短期記憶も「できない」と評価する。
④「5-1薬の内服」の介助の方法、「3-2日課の理解」の能力を加味して評価する。

前回の「短期記憶」の記事

以前の「話題:短期記憶を認定調査員はどんな方法で評価・選択しているのか?」の記事

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由及び特記のポインと

ケース及び特記例選択された選択肢選択理由/ポイント
妻との2人暮らし。日頃の状況から短期記憶は難しいとの話あり。できない
(4-12ひどい物忘れは「ない」を選択)
この特記では正しい選択か判断できません。具体的な選択理由の記載は必須です。
食事したことは覚えているが食事内容は答えられず、調査直前は部屋の片づけをしていたが片付けた物が思い出せない。できない数分~1・2時間前の行為や行動を覚えているかを評価するもので、その内容まで覚えていることは求められていません。このケースの場合は「できる」を選択すべきと考えます。
3品提示するも答えることが出来なかったため短期記憶保持は困難と判断できない選択根拠としては、日頃の状況→調査時の質問に対する回答→3品テストの結果、の順番で決定すべきです。日頃の状況を聞き取りすべきです。
短期記憶については、記憶テスト0点だった。できない記載された「記憶テスト」についての説明がないので判断できません。
今言った事をすぐ忘れる時が目立ってきているとのケアマネ談できない「目立ってきている」は頻度を表す表現ではありません。頻度が多い状態なら「頻度から選択」と記載したほうが良いでしょう
言ったことを忘れていることが毎回ではないがよくある、との家族談できない「毎回ではないがよくある」は曖昧な表現なので、頻度が多いという表現にすべきです
現在特定施設入居中で、孫が毎日面会に来るが孫にいつも同じことを言うできないこの場合は短期記憶の定義に該当しません。
短期記憶力は低下しており、今言ったことを忘れることが週に1回はあり、同じ話を繰返すとケアマネ談できない週1回の頻度でその行為がある時に「できない」を選択するのは、有無の項目の選択基準です。能力項目では頻度で選択します。