認定審査会に伝わる特記を書くPart2|認知症高齢者の日常生活自立度
1次判定への影響
認知症高齢者の日常生活自立度は、ランクⅢ以上の場合は障害高齢者の日常生活自立度によっては「認知症加算」の対象になり得るので、1次判定への影響は大きいと言えます。
また、介護現場での介護報酬でも、通所サービスやグループホームを対象に「認知症加算」があります。そしてその対象は、主治医意見書に記載された「日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ、M」に該当する者になりますが、もし主治医意見書に認知症高齢者日常生活自立度の記載がない場合は認定調査員の判定を使用することになっています。
ポイント
・判定理由には、特記に記載がない認知症状や周辺症状を持ってくることはしないようにします。
判定理由の特記には、基本項目の特記事項に記載してあることを要約して載せるのが原則です。
・判定基準となる介護の方法や必要性については、身体的な理由ではなく、認知症の観点から判断します。
・調査員テキストの判定基準には「意思疎通の困難さ」と言うワードが出て来ます。そのため、3-1「意思の伝達」を判定基準として捉えている方を見かけますが、3-1「意思の伝達」との定義が異なっている点に注意が必要です。
判定基準
ランク | 判定基準 | 具体的な状態像 |
---|---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している | 物忘れや同じ話の繰り返しなどがあるが、金銭や内服の管理ができ、日常生活は概ね自立している |
Ⅱ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる | 金銭や服薬の管理などに介助が必要で、物忘れなどがあって日常生活に影響している場合 |
Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態がみられる | |
Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる | |
Ⅲ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする | 更衣、食事、排泄に介助が必要 失行や失認があり介助が必要 迷惑行為や不穏などがあり対応に苦慮する場合 |
Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる | |
Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる | |
Ⅳ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、 常に介護を必要とする | ランクⅢと同じ状況だが、常に介護が必要で目が離せない状態 意思の疎通が困難な場合 |
M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な 身体疾患が見られ、専門医療を必要とする | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や問題行動があり、専門医による治療が必要と考えられる場合 |
特記記載例
記載例 | 判定 | ポイント |
---|---|---|
意思疎通可能で、理解力低下や物忘れが年相応にあり看護師の支援を受けている | Ⅰ | 意思疎通ができることを判定理由にしたようです。意思疎通ができても、看護師の支援が必要な場合はランクⅡに該当すると考えます |
お金に対しての執着が強く、お金がないなどと被害的になることもある | Ⅱa | 金銭管理が出来ているか、日常生活に影響している認知症の行動がないかの記載をするべきです |
落ち着いてはいるが、食事摂取量に波があり、また、認知症や脱水での入退院を繰返している | Ⅱa | 認知症があり、食事量低下や脱水など、自立的な生活ができていないことが判定理由と思われます。判定は今までの経過ではなく、過去概ね1か月内での生活状況でするべきです |
短期記憶の低下があり、服薬・金銭管理に介助が必要 | Ⅱb | 分かりやすい特記です |
入院中で、服薬拒否や帰宅願望、夜間の頻回なナースコールがある | Ⅱb | 認知症状に対して見守りや声がけでは対応できず、日常生活に支障がある場合はランクⅢに該当すると思います |
短期記憶ができず、理解力低下もあり、声を荒げるなどの行為もあって対応が必要 | Ⅲa | ランクⅢは認知機能低下により日常生活に介助が必要な場合が該当します。短期記憶や理解力ではなく、更衣や排泄の状況を記載したほうが説得力があると思います |
被害妄想など、日常生活に支障をきたす症状が時々見られている | Ⅲa | このランクの判定は症状や行動が「ある」場合を想定しています。「時々ある」の場合は該当しません。 |
以前に比べて物忘れは進行している | Ⅲa | 以前との比較ではなく、概ね過去1か月での状況で判定します |
短期記憶や被害妄想があり、金銭、服薬管理に介助が必要 | Ⅲa | ランクⅢと判断するには、短期記憶や被害妄想ではなく、日常生活に支障のある行動の記載をするべきです |
小規模多機能に連泊中で、認知症が進行し、帰宅欲求や収集癖があり、昼夜介護が必要である | Ⅲb | 日常的に介助が必要で、夜間の介助も必要なことからⅢbと判断したことが分かる記載です |
短期記憶の保持は困難で、見守りを受けることで支障なく生活できている | Ⅲb | この特記はランクⅡに該当するものです。Ⅲと判定するのであれば、日常生活に支障をきたす行動の記載をするべきです |
見当識障害、記憶力低下が顕著。不穏や易怒性が見られるため食席を配慮したり、他利用者とのトラブルを防ぐために職員が間に入るなどの対応が必要で、常時の見守りや介助が必要 | Ⅳ | 判定理由に具体的な記載も必要ですが、基本的には要約で、簡潔に記載すべきです |