認定審査会に伝わる特記を書く|麻痺・拘縮の有無
各調査項目の特記記載例を紹介していきます。
新年度となる4月から「審査会に伝わる特記を書く」は各調査項目の特記記載例を紹介していきます。
特記は「実際に見たり聴いたりした具体的な状況」を記載する作業なので、それほど難しい作業ではないと思えるのですが、限られたスペースを使ってその状況を解りやすく文章で相手に伝えることは程度の差はあれ簡単ではありません。
これは認定調査の市販参考書などでは特記例を豊富に記載している事が本の売りになっていることなどを見ても明らかです。
このコーナーでは特記記載のヒントになるべく、状況が判る表現や用語の使い方について、具体的な特記記載例と記載のポイントを紹介していきます。
麻痺等の有無
「ない」
記載例 | ポイント |
上肢下肢の確認動作はスムーズに出来る | 記載スペースがあるのであれば、「ない」を選択した場合でも確認動作の状況を記載します |
膝は約20度の屈曲拘縮があるが、他動的に伸ばすことができる最大角度まで自分で伸ばせるため麻痺は「ない」を選択する | 可動域制限がある場合、その状況と大まかな角度、選択理由を記載します。 屈曲拘縮の場合、約30度以上の拘縮の場合「著しい拘縮」として「麻痺あり」を選択、拘縮が約30度未満の場合「軽度の拘縮」と判断するのが妥当で、そのうえで他動的に最大限上げられる高さまで自分で上げて保持できれば「麻痺なし」を選択しています |
認知症があり、指示が通らず確認動作はしてもらえなかった。家族の話では、日頃身体機能に問題はなく、上下肢ともに確認動作と類似の動作ができていると聞き取り、麻痺は「ない」を選択する | 確認動作をしてもらえなかった理由と、選択根拠とした日頃の状況を記載します |
「上肢・下肢」
下肢は麻痺があり、膝から先をわずかしか上げられない | 確認動作ができない理由と状況を記載します |
下肢は水平まで何とか上げることが出来るが、筋力低下があり、すぐ下がってしまう | 同上 |
肩の可動域制限があり、前は肩の高さまで上げられるが横は胸の高さから上に上げられない | 同上 |
肘は約40度の屈曲拘縮があり、真っすぐに伸びない。肘関節を伸ばした状態では肩の高さまで上げられない | 肘の拘縮が著明で、上肢が伸展位にならない場合は確認動作ができないとして「麻痺あり」を選択し、その状況を記載します |
股関節は伸展した状態での拘縮があり、仰臥位でも下肢をほとんど上げられない | 確認動作ができない状況を記載します |
膝は約30度の屈曲拘縮がある。他動的に伸ばすことができる最大角度まで自分で伸ばことが出来るが、著しい拘縮と判断し、「麻痺あり」と評価する | 膝の屈曲拘縮がある場合、拘縮が約30度以上の場合を「著しい拘縮」として「麻痺あり」を選択、拘縮が約30度未満の場合は「軽度の拘縮」と判断しています |
寝たきりで、眼は開けているが反応に乏しく、確認動作はしてもらえなかった。日頃からADLは全介助で上肢や下肢を上げることはないと介護者に聞き取り「麻痺あり」を選択した。 | 確認動作ができない理由と状況、選択根拠を記載します |
「その他」
頚椎疾患での手術既往があり、後遺症で首をわずかしか回せない | 上肢、下肢以外の麻痺等がある場合。部位と状況を記載します |
腰曲がりが強く、ほぼ直角に曲がっている。腰を伸ばすことができず、顔が水平より上に上がらない | 同上。円背、亀背も同様 |
左下肢は大腿部から欠損しており、麻痺の確認動作はできない。義肢は使用していない | 欠損の部位を記載。麻痺の確認動作ができない場合は左下肢も麻痺に該当します |
右手4・5指が欠損している。そのため握力が弱く、ペットボトルなどのフタを開けることができない | 四肢の一部に欠損がある場合。 生活の支障については、関連項目で述べる機会がない場合は麻痺の特記に記載します |
拘縮の有無
「ない」
記載例 | ポイント |
肘に屈曲拘縮があり、肘を伸ばすと腕は胸の高さまでしか上がらない。しかし肘を曲げた状態では腕を他動的に肩の高さまで上げることが出来ることから、肩関節の拘縮は「ない」を選択する | 麻痺の選択基準とは違う点に注意。 |
ベッド上生活で、調査の際股関節の屈曲は痛くてできなかった。しかし日頃は1日数回車椅子に乗車し、その際股関節を直角に曲げ、膝も左右に開くこともできていると聞き取り「ない」を選択する | 調査時と日頃の状況の違い、より頻回な日頃の状況で選択したことを記載する |
膝は約20度の屈曲拘縮があるが、著しい可動域制限とは言えないと判断し「ない」を選択する | 麻痺の記載例とポイントを参照 |
「肩関節」「股関節」「膝関節」
他動的に腕を横に上げると胸の高さで肩が痛くなり、顔をしかめてしまう事から肩関節を選択する | 確認動作ができないと判断した根拠を記載します |
人口股関節の脱臼で入院中。現在脱臼は整復され固定用装具を付けている。装具は日常的に付けており、股関節の確認動作は出来ないことから「拘縮あり」を選択する | 装具を日常的に付けている事と、確認動作ができない状況を記載します |
両膝の屈曲制限があり、伸展は出来るが他動的にも70度程度までしか曲がらない。著しい可動域制限と判断し「拘縮あり」を選択する | 著しい可動域制限と判断した状況を記載します |
膝は約30度の屈曲拘縮があり、著しい拘縮と判断して「拘縮あり」を選択する | 麻痺の記載例とポイントを参照 |
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※「膝関節の可動域制限がある」とした場合、ほとんどが伸ばせない状態である「屈曲拘縮」をさしますが、曲げられない状態である伸展拘縮(屈曲制限)の場合もあるので、どちらなのかと、大よその角度を記載します。
「その他」
手指の拘縮がある | 「麻痺等の有無」では手指は上肢に含まれているが、「拘縮の有無」は関節単位で評価するため「その他」に該当します |
関節リウマチで手指の関節が変形し、動かすと痛みがあるため「その他」を選択する | 痛みで関節が動かせない場合は「関節可動域に制限あり」と評価して、その状況を記載します |