認定調査項目を読み解く|被害的になる・作話

 

4-1 物を盗られたなどと被害的になる

1.項目の定義

「物を盗られたなどと被害的になる」行動の頻度を評価する項目です。

ここでいう「物を盗られたなどと被害的になる」行動とは、実際は盗られていないものを盗られたという等、被害的な行動のことです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

 

3.選択の際の留意点

妄想か否かを問わず、「無理やり施設に入れられた」「物を盗られた」「食事を食べさせてもらえない」など、被害的な思い込みや言動があるかで選択します。

4.ポイント

被害的な発言の多くは事実と違っており、作話にも該当するものがあります。しかし被害妄想=作話ではありません。

例えば、病院で検査などのために当日の朝食が出なかったとします。それに対して対象者が「私だけ食事を食べさせてもらえなかった」と言っている場合、「被害的になる」には該当しますが、実際に食事が食べられなかった訳ですから「作話」には該当しません。実際には食事を食べているのに食べさせてもらえなかったなどと言っている場合は「作話」に該当します。

5.判断に迷うケースの選択肢と選択理由

    ケース  選択肢選択理由
以前から物事を否定的に考え、他人に対する批判が多い。また、かーっとなりやすい性格のため周囲は気を遣っているない
否定的な考えであっても被害的な言動がない場合は該当しない
保険証がない、診察券がない等「ここに置いたはずなのにない」と言って興奮することが月に2 ~ 3 回あるない
理由はともあれ「ない」という事実を言っている状態であり、被害的言動には該当しない
1か月前から入院中。入院翌日に不穏になり「隣の人に見張られている」と訴えたことが1回あった。被害的な発言はこの1 回だけでそれ以降はないない現在の状況では月1 回以上その行動は現れないと判断した場合は「ない」を選択し、入院翌日のことは特記に記載する。
施設入所中で、自分の思い込みで「他の入所者が私を馬鹿にしている」「私を邪魔者扱いする」と施設職員に訴えることが月に2 ~ 3 回あるときどきある
思い込みによる被害的な言動は該当する
訪問介護を週2回利用している。ヘルパーが部屋を片づけると「あの人たちが来る度に部屋の物がなくなる」と毎月訪問する担当ケアマネージャーに訴えるときどきある
片づけたことを盗られたと勘違いしている状態で、被害的な考えは毎週あると思われるが、被害的な発言は
月1 回のため「ときどきある」を選択する
嫉妬妄想があり、夫に対し「私がいない時に女に会っている」「私の服がない。女のところに持って行った」等と毎日のように夫を責め立てるある
嫉妬妄想自体は被害的行動ではないが、「服を持って行かれた」という被害的な考えがある
施設入所中で、しばらく家族の面会がないと、「誰も私のことを心配していない」「私は要らない人間だ」等と嘆くことが週に1 ~ 2 回あるある
自分は特別な扱いを受けているとの被害的な言動がある

 

4-2 作 話

1.項目の定義

「作話」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「作話」行動とは、事実とは異なる話をすることです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

幻視、幻聴等の幻覚については、調査員テキスト2009改訂版では作話の対象にしていません。
この場合は「なし」を選択し、その具体的な状況を特記事項に記載するか、または認知症高齢者自立度の特記事項欄に記載することとなっています。

なお、幻視、幻聴を作話として扱わないことについては保険者によって判断が分かれているため、各保険者に確認することをお勧めします。

幻視・幻聴について保険者からの統一した見解がなく各調査員にその判断が任されている場合、調査員の多くは「作話」として評価しているようです。

4.ポイント

故意であるかや周囲に言いふらすかは問いません。また、記憶障害による間違った発言もを含みます。

事実と違うことを述べている場合を作話としますが、述べる目的や理由ではなく、話の主旨に着目して判断しましょう。

例えば施設入所している方が「皆が私を嫌っているので体操する時に呼んでもらえない」と言っている場合、実際には体操の際に声掛けしているのに参加していない場合は「作話」に該当しますが、実際に呼んでもらっていない場合は該当しません。

「皆が私を嫌っている」というのは対象者の思い込みで事実と違うかもしれませんが、これは対象者が被害的に考えていることであり作話には該当しません。

5.判断に迷うケースの選択肢と選択理由

    ケース  選択肢 選択理由
「膝がザワザワする」「身体の中に何かいるような感じ」等と自分の症状を説明するない
身体症状の表現の仕方は各人に違いがあり、作話には該当しない
判断力低下があり妥当な判断ができない。そのため周りの人の意見に左右され、話の内容に一貫性がないない
事実と違う話をするのではなく、考えや話の趣旨が変わる場合は作話に該当しない
糖尿病があり食事制限中である。自室にはコーラの空き缶や菓子の空袋があるため家族が注意すると「医師から何も言われていない」と反論するときどきある
事実と違う取り繕いの発言は作話に該当する
尿失禁し廊下を濡らしているところを対象者に見せて注意すると、自分がしたとは認めず「誰がしたんだ」と怒り出すときどきある
本人に自覚がない、または認めない場合でも、明らかに事実と違う話をする場合は該当する
対象者の姉は既に亡くなっているが、その認識がなく今でも会って話をしている等と言うことが週に2 ~ 3 回あるある
記憶障害に伴う事実と異なる話は作話に該当する
自分から話すことはほとんどなく、相手が話しかけると返答するが、明らかに事実と違う返答をすることが毎日あるある
自ら周囲の人に言いふらす状態でない場合でも、事実と違う話をする場合は該当する

 

次回は 4‐3感情が不安定・4‐4昼夜逆転 を読み解きます。