認定調査項目を読み解く|日常の意思決定

1.項目の定義

「日常の意思決定」の能力を評価する項目です。
ここでいう「日常の意思決定」とは、毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定できる能力をいいます。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

● 一定期間の定めはありません。
● 調査日の状況だけではなく、日頃の状況も考慮します。
● 内容を理解したうえで、自分で妥当な決定ができているかで選択します。

<具体的な選択例>

ーできるー
● 治療方針、介護サービス利用やケアプランなどについて、合意、検討、決定を自分が主体となってできる
● 地域行事、冠婚葬祭などの出欠を、自分が主体となって決定できる

ー特別な場合を除いてできるー
●治療方針の合意や介護サービス利用の検討等、大事なことや特別なことの決定には家族等周囲の援助が必要である
● 自分の身の周りのことは自分で決定できるが、書類や提出物などの内容が理解できず、周囲の人に処理を依頼したり手伝ってもらう必要がある
● 特別なことや身の周りのことも概ね自分が主体となって決定しているが、入浴や更衣等の特定な行為に対して妥当な判断決定ができず、周囲の援助が必要である

ー日常的に困難ー
●独居などで自分の身の周りのことは自分で決定しているが、妥当に決定できない時が多いために決定には周囲の指示や援助を必要とする頻度が多い
● 日頃から自発的な行動はなく、生活全般に援助を必要とするが、意向を聞かれると妥当に返答や決定をする時がある
● トイレに行く、横になりたい等、限定的なことを自ら決定し要求する

ーできないー
●意思疎通できない
● 聞かれても答えられない
● 意思決定できるかわからない

4.ポイント

● できる⇒内容を理解したうえで、重要なことも自分で意思決定できる、あるいはできる頻度が多い場合が該当。

●特別な場合を除いてできる⇒ 特別なことを決定するには周囲の援助・介入が必要だが、自分の身の周りのことは概ね決定できる。または決定できる時が多い場合/特別なことも決定できるのだが、自分の身の周りのことに対して妥当に判断決定できないため援助の必要がある場合などが該当。

●日常的に困難⇒ 身の周りのことに対して妥当に決定できる時が少ない場合/限定的なことのみ決定できる場合/日ごろ決定できないが、場面によっては決定できる時がある場合などが該当。

●できない⇒聞かれても答えられない場合/決定できるか判断できない場合などが該当。

5.判断に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース選択肢選択理由 
自分一人での決定や判断に迷う時は家族や友人に助言を求め、それを参考にして自分で決定しているできる周囲の助言を受けるが、自分が主体となって決定している場合は「 できる」と評価する
転倒で骨折し緊急入院した。手術することは家族が医師から説明を聞き了解した。近々退院予定で、医師の勧めでデイケアを利用することを自分で決めたできる緊急の入院や手術は「日常の意思決定」には当たらないと考える。退院後のデイケア利用を自分で決定して
いることから選択する
独居で、献立や買い物など身の周りの判断決定はしているが、郵便物や請求書等は週に数回自宅に来る娘に見てもらい処理している特別な場合を除いてできる身の周りのことは決定するが、重要な手続等の判断決定に援助が必要な場合は該当する
ほとんどのことは妥当に判断決定しているが、入浴が億劫で家族が説得しても拒否し、入浴は月3 ~ 4回の生活である特別な場合を除いてできる常時あらゆる場面で妥当な意思決定ができているとは言えない。入浴以外の身の周りのことは妥当に決定していることから選択する
現在施設入所中。日ごろ身の周りのことは自分で決定している。定期受診は施設看護師が同行し医師の話を家族に伝えている。施設のケアプランなどは家族からサインをもらっている。特別な場合を除いてできる治療方針やケアプランなど特別なことは施設や家族が介入していることから選択
施設入所中で、日頃から自発的に行動することはなく、日常生活全般を職員から促されている。しかしレクリエーション参加等興味のあることは自分から行きたいと言う日常的に困難限定的なことのみ決定している場合は該当する
現在入院中。ベッド中心の生活で日常生活全般に誘導や促しが必要だが、「食事は○○で食べたい」とか、食後に「ベッドに横になりたいから部屋に連れて行って」などと看護師に訴える日常的に困難日常生活全般の決定に援助が必要だが、限定した事柄に対してのみ自分で決定できる場合は該当する
意思疎通ができないため、意思決定できるか判断できないできない意思決定できるか判断ができない場合は「できない」を選択する
認知症があり、意思疎通はある程度可能だが失行・失認があり日常生活全般に指示や誘導が必要である。本人に意向を聞いても明確に答えないため介護者が本人の反応を見ながら判断している。できない意思疎通は可能だが自分で判断決定はできないと評価する

 

次回は「5-4 集団への不適応」について読み解きます。