話題|神経系内服薬の副作用について

神経系内服薬の副作用について

精神科疾患がある方の認定調査では、私の場合はある程度の症状や日常生活への支障などについて事前に調べますが、状態像が考えていたイメージと違う場合がしばしばです。

これは個人差や病期によって違うことは言うまでもありませんが、内服している抗精神薬などの副作用も影響していると考えています。

よく見られる方に、活気なくベッドに横になり、話しかけても思うように言葉が出て来ない、また、落ち着かず、舌をしきりに動かしている場合などがあります。
介護者や施設職員に聞くと、入院を機にADLやコミュニケーション能力が低下した、また、入院はしていないが複数の精神科疾患の診断となり以前より薬の量が増え、ADLが低下したなどの話を聞くことも多くあります。

逆に、活気がなくADLが低下し介護の手間が増えたので主治医に相談し、薬を調節してもらった結果ADLが改善したという話も聞きます。

認定調査はそれぞれの項目で該当期間があり、ほとんどが直近の状況で評価しますので、薬の副作用か否かは選択肢には影響しません。ですが、薬の副作用と思われる症状がある方は体調に波がある場合が多く、自分で出来る時もあれば介助が必要な時もある、そのような状況を特記に記載するケースが多いように思います。

今回、訪問調査でよく見られる、薬の副作用と思われ症状を調べてみましたので参考にしてみてください。

1.訪問調査で多く見られる認知症以外の神経系疾患

①パーキンソン病

②統合失調症

③老人性うつ

④てんかん

 

2.①~④の疾患に処方される薬の副作用と思われる代表的な症状または状態

・遅発性ジスキネジア

・過鎮静

・眠気

・起立性低血圧・立ちくらみ

3.それぞれの症状・状態について(以下は専門家の解説です)

Ⅰ.遅発性ジスキネジア

ジスキネジアとは意味のない不随意運動(自分の意思とは無関係に起こる運動)の総称です。口の動きが多いですが手足にも現れることがあり、勝手に手が動いてしまう、足が動いてしまって歩きにくいといった症状が現れることもあります。

また、手足に症状が広がるときはジストニア(持続的に筋肉が緊張し、異常な姿勢や運動を繰り返すこと)やアカシジア(じっとしていることに違和感を覚え、常にそわそわしてしまうこと)と呼ばれる症状が見られることもあります。

遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などの治療薬を使用した後に現れ、自分の意思とは関係ない動きが繰り返される症状のことです。舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなどの意味のない動きを繰り返し、自分の意思では止められない症状を指し、なかでも抗精神病薬などを長期に使用した場合に副作用として現れるものを“遅発性ジスキネジア”と呼びます。

Ⅱ.過鎮静

抗精神病薬の他、抗不安薬や睡眠導入剤によっても、日中に眠気が強く、頭がぼーっとして何もできない状態や自発性低下などが見られることがあり、これを過鎮静と言います。特に急性期が過ぎて、症状が落ち着いてきた頃に出やすい症状です。

薬がもつ興奮を静める作用が強すぎるときに起こると考えられます。発病後間もない急性期には、症状を抑えるために強い薬が使われることが多いので、ぼーっとすることがありますが、長く続く場合は日常生活や社会復帰を考える上でマイナスになります。

NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会の「2006年、精神医療ユーザーアンケート調査報告書」では、薬を飲むことで発現する副作用として「頭がボーッとする、だるい(29.1%)」、「日中、眠くなる(27.1%)」を困っている項目としてあげた患者さんが約3割いることが報告されています。

Ⅲ.眠気

日中過眠(日中の過剰な眠気)はパーキンソン病薬に多いといわれています。 なかには突発的に眠くなる突発睡眠が見られます。

また、抗うつ剤は『鎮静系抗うつ剤』とも呼ばれ、強い眠気を生じやすく、不眠で困っているときにはその副作用が治療の助けになることがあります。

Ⅳ.起立性低血圧・立ちくらみ

鎮静作用のある薬は、血圧を下げる働きもあるため、起立性低血圧になって、立ちくらみが起きやすくなります。また、自律神経障害としての起立性低血圧、ふらつき、めまいなどがあります。

自律神経の副作用は薬に慣れると消えていくものが多いですが、気になる場合は昇圧薬を使うこともあります。

まとめ

以上のように、訪問時に調査対象者に見られている症状や状態は、実はパーキンソン病や統合失調症などの神経系疾患自体の症状ではなく、内服による2次的なものである場合が少なくありません。
精神科疾患の症状は、考えや行動が偏ったり非合理的であったりしますが、眠気が強くて終日横になって過ごすようなものではないのです。

要介護認定では疾患名や症状については医師が主治医意見書で述べるものですが、複数の神経系薬を内服している方で、病名からは想定できないような状況であり、内服薬の副作用による可能性が高いと思われる場合は、認定調査員として“薬の副作用と思われる〇〇の行動・状況が見られる”と特記や概況に記載しても良いのではないかと考えています。