認定調査項目を読み解くPart2|認知症高齢者の日常生活自立度

1.判定の基準

調査対象者について、訪問調査時の様子や日頃の状況から、下記の判定基準を参考に該当するものを選択します。なお、まったく認知症を有しない者については、自立を選択します。

ランク

      判断基準

     見られる症状・行動例

 Ⅰ

何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している

 

 Ⅱ

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる

 

 Ⅱa

家庭外で上記Ⅱの状態がみられる

たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等

 Ⅱb

家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる

服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない等

 Ⅲ

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする

 

 Ⅲa

日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる

着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。 やたら物を口に入れる、物を拾い集める、徘 徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、 不潔行為、性的異常行為等

 Ⅲb

夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる

ランクⅢaに同じ

 Ⅳ

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、 常に介護を必要とする

ランクⅢと同じ症状だが、常に介護が必要な状態、目が離せない状態の場合に選択

 Ⅿ

著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な
身体疾患が見られ、専門医療を必要とする

せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等


2.判定にあたっての留意事項

・特記事項に実際に記載された周辺症状などを判定根拠とします。

・テキストでは「認定調査項目に含まれていない認知症に関連する症状のうち、『幻視・幻聴』、『暴言・暴行』、『不潔行為』、『異食行動』等については、関連する項目の特記事項に記載するか、認知症高齢者の日常生活自立度の特記事項に記載すること」としていますが、実際は「幻視・幻聴」は独語、「暴言・暴行」は介護抵抗や勝手な行動、「不潔行為、異食行動」は勝手な行動としてそれぞれの項目で評価している場合がほとんどです。

・ 評価する具体的な期間の指定はありませんが、BPSD 関連の評価は概ね過去1か月間であることからそれに準じて選択します。

3.ポイント

・特記事項への記載としては

(Ⅱb)物忘れや勝手な行動が時々あるが、周囲の見守りや注意程度で生活できていることから選択した。

などの形で記載します。なお、判定理由に、項目特記に全く記載のない周辺症状や介助の手間を持ってくることはしないようにします。あくまでも、特記に記載のある状況や介助の手間を判定の根拠とします。

・判定基準となる介護の必要性や手間は、身体的な理由ではなく、認知症の観点から判断します。

・主治医意見書と判定が違っても何ら問題はありません。

4.複数の認定調査員が判定基準とした各ランクの代表的な状態像

判定判定基準
①年齢相応の物忘れのみ
②特別なことの決定にのみ家族の介入が必要
③日付や曜日が判らないが日常生活は自立
④もの忘れはあるが日常生活は自立
⑤感情不安定はあるが社会的には自立
Ⅱa①金銭・服薬管理に介助が必要
②記憶力低下があり、新しいことが理解できない
③記憶と理解力低下がある
④意欲低下があり、管理面の介助が必要
⑤物忘れと同じ話の繰り返しがある
Ⅱb①金銭・服薬管理に介助が必要
②物忘れがあり管理面に介助が必要
③短期記憶低下と理解力低下がある
④物忘れが日常的にある
⑤短期記憶低下がある
Ⅲa①短期記憶と理解力低下があり、服薬と金銭管理に介助が必要
②更衣、排泄に介助が必要
③意思疎通に支障があり、日常生活全般に介助が必要
④危険な行動や勝手な行動があり対応が必要
⑤日常生活全般に介助が必要
Ⅲb①昼夜逆転や帰宅願望があり、昼夜の見守りが必要
②昼夜逆転と不潔行為がある
③徘徊が早朝から夜中まである
④更衣・排泄に介助が必要で、不潔行為がある
⑤意思疎通に支障があり金銭・服薬管理ができない
①意思疎通困難
②車椅子から立ち上がろうとして目が離せない
③失行や失認がありADL全介助
④不穏があり常時の見守りが必要
⑤日常生活に支障をきたす行動があり、意思疎通にも支障がある
M①帰宅欲求があり常に見守りが必要
②専門医を継続して受診している

5.判定フローチャート(参考)

このフローチャートは拙書 ‟要介護認定調査の評価・判断ポイントがわかる本” に載せているオリジナルチャートです。参考にしてみてください。