認定調査項目を読み解く|移乗・移動

2-1 移 乗

1.項目の定義

「移乗」の介助が行われているかどうかを評価する項目です。

ここでいう 「移乗」とは、「ベッドから車いす(いす)へ」「車いすからいすへ」「ベッドからポータブルトイレへ」 「車いす(いす) からポータブルトイレへ」 「畳からいすへ」 「畳からポータブルトイレへ」「ベッドからストレッチャーへ」等、でん部を移動させ、いす等へ乗り移ることです。

清拭・じょくそう予防等を目的とした体位交換、シーツ交換の際に、でん部を動かす行為も移乗に含まれます。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・福祉用具や器具類を使用している場合は、使用している状態で選択します。

・義足や装具、歩行器の準備等は介助に含まれません。

・畳中心の生活で椅子等を使用していない場合に、両手を使って腰を浮かせる行為自体だけでは移乗に該当しません。

・寝たきりなどで、体位交換を含む移乗行為がまったく発生しない場合は、行為が発生したことを想定して適切な介助の方法を選択します。その場合は具体的な状況と選択根拠を記載します。

・時間帯や体調によって介助の方法が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況においてより頻回にみられる状況で選択します。

・時間帯や体調によって介助の方法が異なる場合は一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況においてより頻回にみられる状況で選択しますが、実際に行われている介助の状況を具体的に記載します。

・介助されていない状況や、実際に行われている介助の方法が不適切と判断し、適切な機序の方法で選択した場合は、不適切とした理由と選択根拠を記載します

4.ポイント ~移乗行為について~

認定調査員テキストに記載された移乗の定義は、「臀部を移動させ、 椅子等に乗り移ること」となっており、例として挙げているのはすべて「座っている状態から別の物に座りなおす状態」で、言ってみれば「直接移乗」の例です。
この他に、軽度者に多く見られる例として「座った状態から立ち上がり、歩いて移動し、椅子等に座る」いわば「間接移乗」があります。

認定調査員の現任研修等ではこの間接移乗を移乗行為としない旨の説明がされる場合があります。その場合、軽度者は日頃移乗行為が発生しないと評価されることになります。
しかし認定調査員テキストにおける 「調査対象者に移乗行為自体が発生しない場合」とは、寝たきり状態にあって移乗行為の機会がまったくない場合を想定しているのであり、軽度者の間接移乗を含むものではないと考えます。

仮に間接移乗を移乗と見なさない場合、調査員テキストでは“移乗行為が全く発生しない場合には、行為が発生した場合を想定して適切な介助の方法を選択する”こととなっています。
実際の調査で「移乗、移動が不安定なために歩行器を使って見守り介助を受けて移動し、立ったり座ったりする際は一部介助を受けている」場合、移乗行為が発生した場合を想定して選択しても実際に行われている介助の方法である「一部介助」となるのが必然です。

また、日頃は直接移乗の行為が発生しない場合でも、受診した際などに車椅子から椅子に座る機会もあり、その行為を移乗として評価するという考えもありますが、一定期間の状況においてより頻回にみられる状況とは言えず、このような場面での評価・選択は適切とは言えません。

これらのことから、移乗の評価は日頃直接移乗が行われていない場合の、「歩いて移動し、椅子等に座る」間接移乗も含めて行うことが適当であると考えます。そして、その状況を特記事項に記載するものとします。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース 選択肢・選択理由
下肢筋力低下のため畳からの立ち上がりが困難で、その際は引き上げ介助を受けている。畳に座るのは仏壇の前に座る朝夕のみで、それ以外は椅子やベッドのために立ち座りに介助はない 介助されていない
畳から立ち上がり椅子に座ることは移乗行為だが、この場合は頻度から選択する
入院し点滴中で離床機会はないが、ベッド柵を掴んで自分で身体の向きを変えており、お尻を動かす際も介助はされていない 介助されていない/ベッド上生活で、直接、間接的にも移乗機会がない場合は臀部を動かす行為を移乗とみなし、その行為に対して行われている介助で選択する
現在入院中で、車椅子はベッドから離れた所に置いてあるために、車椅子に移乗する際は毎回看護師が車椅子をベッドサイドに運び、付き添って見守りしている 見守り
移乗のために車椅子を準備する行為は移乗の介助に当たらない。この場合は、付き添っての見守りが介助に該当する
車椅子には自分で移乗するが、フットレストを上げない、ブレーキをかけ忘れているなど危険なために毎回介助者が付き添って声かけ指示が行われている 見守り
常時の付き添いの必要がある指示、声掛けは見守りに該当する
日頃自宅内は歩行器で移動し椅子などに座る生活で直接的な移乗行為はないが、トイレで便器に座ったり立ち上がる際には毎回腕を支える介助を受けている 一部介助/日頃直接移乗の機会がない場合は、椅子や便器に座る、そこから立ち上がる行為を移乗行為と評価し、その介助方法と頻度で選択する
膝の拘縮があるが何とか掴まって立位保持できる状態。移乗の際は腰の引き上げと腰を支える介助を受けてようやく乗り移っている 一部介助/足に荷重できない、掴まっても立位保持できないなどで介護者がほぼ全身を抱えている場合は全介助だが、この場合は一部介助に該当する。一部介助にも幅がある例
重度の寝たきりで移乗の機会はない。自分では寝返りできず、体位交換の際は毎回看護師が腰を持ち上げて身体を移動し向きを変えている 全介助/一般的な移乗機会がない場合、ベッド上で臀部を動かす行為を移乗行為とする。その行為に対する介助の方法で選択する
現在施設入所中で経管栄養が行われている。ベッド上生活で昼の経管栄養の際のみ2人介助で抱きかかえて車椅子に乗車し食堂に移動している。褥瘡になりやすいためにベッド上では2時間ごとに全介助で体位交換が行われている 全介助
選択理由のみでなく、2人介助や2時間ごとの体位交換など、通常の介助より手間がかかっていることを特記事項に記載する

 

 

2-2 移  動

1.項目の定義

「移動」の介助が行われているかどうかを評価する項目です。

ここでいう 「移動」とは、「日常生活」において、食事や排泄、入浴等で、必要な場所への移動にあたって、 見守りや介助が行われているかどうかで選択します。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・移動の手段は問いません。

・義足や装具を使用している場合は使用した状態で判断します。

・外出は移動に含みませんが、外出頻度が多い場合は特記事項に状況を記載します。

・時間帯や場所によって介助の方法が異なる場合は、一定期間(概ね過去1週間)の状況においてより頻回に見られた状況で判断します。

・移動機会がない場合は、移動行為が生じたことを想定して適切な介助の方法で選択します。

・介助されていない状況や実際に行われている介助の方法が不適切と判断した場合は、適切な介助の方法を選択し、不適切とした理由と選択根拠を特記事項に記載します。

4.ポイント

・介助の方法は移動する距離ではなく頻度で評価します。
自室にいる時間が長い方の場合、自室内は介助なしで歩き、自室から出た際のみ介助を受けているケースでは「介助されていない」を選択します。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース 選択肢・選択理由
歩行不安定だが介護者が側で付き添うと「監視されているようだ」と不機嫌になるため、介護者は少し離れた所から常時見守りしている 見守り/すぐ側での付き添いがない場合でも、付き添いに準じた状況の場合は見守りに該当する。状況を特記事項に記載する
膝痛があり歩行不安定。洋式トイレが2階にしかないために毎回階段を昇降する。階段を上がる音に気付いた時は妻が心配して近くまで見に行っている 介助されていない
近くに見に行く行為だけでは見守りに該当しない。常時付き添い、危険な時にはすぐに介助できる体制にある場合が見守りに該当する
施設入所中で、食事以外は自室で過ごしている。自室内でのトイレ移動などに介助はないが、食事の際の食堂への往復はふらつきがあるため毎回職員が付き添っている 介助されていない/食堂への移動よりも自室内での移動頻度が多いことから、その介助の方法で選択する
施設入所中で、認知症があり目的の場所に行けないために毎回職員から行きかたの声掛けと指示が行われている。時には手引き誘導が必要な場合もある 見守り/常時の付き添いがない場合でも、認知症高齢者等に対して目的の場所に行くための指示や声掛けが行われている場合は見守りに該当する
車椅子使用で、直線や平らな所は自力で駆動するが、段差があるところやコーナーを曲がる際は毎回車椅子を押す介助を受けている 一部介助/移動の「一部」が介助されている場合でも、介助される頻度が多い場合は「一部介助」に該当する
独居で中途失明者。週2回家事援助で訪問介護を利用している。ヘルパーがいる間はヘルパーが手を添えて伝い歩きしているが、一人の時は這って移動しており、その際方向が分からなくなりトイレに間に合わずに失禁してしまうことが度々ある 一部介助
這って移動していること自体は必ずしも不適切とは言えないが、失禁が度々ある状況は介護者不在による不適切な状況と判断し、適切な介助の方法として「一部介助」を選択する
ベッド上生活で週3回ディサービスを利用している。在宅での移動機会は1日1回脇支え介助で気分転換に茶の間に行くのみ。食事はベッド端坐位で食べ、排泄はポータブル便器を使用。ディサービスでの移動の際は車椅子を押す介助を受けている 全介助/在宅で過ごす時間がディサービスより長いが、移動機会は自宅よりもディサービスの方が多いことからその介助の方法で選択する
2週間前に心疾患で入院し、ベッド上安静の指示があり離床機会はない。看護師の話では、状態は安定しており能力的には一部介助で歩けるとの事であった 全介助/医学的な理由で移動が禁止されている場合は能力ではなく移動機会が生じたことを想定して適切な介助の方法で選択する。この場合、心負担にならない車椅子移動が適切と考える

 

 

次回12月の読み解く項目は、2-3えん下/2-4食事摂取 の予定です。