話題|幻視・幻聴をどのように評価しているかをアンケート

新年あけましておめでとうございます。

今後も皆さんのお役に立つ記事を投稿していく所存です。

どうぞ、今年もよろしくお願いいたします。  

今月の話題:現役調査員は幻視・幻聴をどのように評価しているのか。

幻視・幻聴の評価について、調査員テキストではどのように説明しているのか。

調査対象者に幻覚によると思われる話がある場合、それをどの項目でどのように評価したら良いのか迷うことはないですか?
私も作話や独語で評価していいものか迷ったことがあります。

調査員テキストで幻視、幻聴の扱いについて記載されているのは「認知症高齢者の日常生活自立度」ページのみでです。(下図赤枠部分)

調査員テキストでは “(2)判定にあたっての注意事項” の記載から判るように、「幻視・幻聴は調査項目には含まれていない」となっています。そして項目では評価せずに、関連する項目の特記事項にはその状況を記載するように指導しています。

ちなみに、関連する項目は「○○がいる、○○がこう言っている、○○が聞こえる」などと話している場合は「4-2作話」、幻視や幻聴に対して呼びかけたり返事をしている場合などは「4-13独語」が該当すると思います。

保険者は幻視・幻聴の評価をどう指導しているのか?

では、市町村などの保険者は調査員に対してどのように指導しているか、保険者が認定調査員向けに出している手引書などを見てみると、4-2作話での評価については以下の4通りの指導をしています。

1.幻聴は選択肢にはならない。‥‥ 佐伯市、他

2.幻視などにより見えたものを事実として認識したうえで話をしているので作話には該当しない。… 横浜市、秩父広域市町村圏組合、他

3.幻視や幻聴によりあり得ないことを発言する場合は該当する。… 姫路市、他

4.妄想や幻覚から作話につながる場合は該当する。… 会津若松市、他

現役の認定調査員は幻視・幻聴をどのように評価しているのかをSNSでアンケートを取って見た。

そこで、現役の認定調査員の方々は幻視・幻聴を実際にはどのように評価しているのかをSNSでアンケートを取って見ました。

―実際のアンケート文面ー

<アンケートのお願い>

認定調査員テキストでは「幻視・幻聴」は調査項目に含まれていないとされていますが、もし調査対象者が幻視・幻聴による話をしている場合、あなたは「4-2作話」ではどのように評価・選択していますか?(複数回答可)

□①ケースby ケース・状況による                       

□②本人が事実と認識していることなので「ない」を選択する           

□③調査員テキスト通り作話では評価せず、認知症自立度の特記に記載する     

□④作話に該当するので「ある」を選択する                   

□⑤市町村などの保険者で「作話に該当しない」と統一されている         

□⑥市町村などの保険者で「作話に該当する」と統一されている          

さらに、「ケースby ケース・状況による」を選択した方を対象に、どのようなケースの場合に作話と評価しないかを尋ねました。

アンケート結果

①ケースby ケース・状況による                        26人
②本人が事実と認識していることなので「ない」を選択する             0
③調査員テキスト通り作話では評価せず、認知症自立度の特記に記載する       0
④作話に該当するので「ある」を選択する                    16人
⑤市町村などの保険者で「作話に該当しない」と統一されている           0
⑥市町村などの保険者で「作話に該当する」と統一されている            3人

「ケースbyケース・状況による」を選択した方の「作話とは評価しないケース」については、ほとんどの方が「独居などで、幻視・幻聴であることが確認できない場合や難聴や視力不良が原因で勘違いをしている可能性が考えられる場合」と答え、基本的には幻視・幻聴であることが確認できる場合は作話が「ある」と評価するとの回答でした。

その結果、幻視・幻聴による話をしていると確認できる場合は、アンケートに回答してくれた方全員が「作話」と評価していることが判りました。

しかし、保険者の中には「該当しない」と指導しているところがある訳ですから、「ない」を選択する方が全くいないことは考えられません。しかし、それを考慮に入れても「ある」と評価している方が多いことは事実だと思います。

アンケートの結果からは、現役調査員の皆さんはテキストを参考にしつつも現実的な評価をしていることが感じとれます。

私自身も数年前までは「見えたものを事実として認識したうえで話をしているので作話には該当しない」としていましたが、そもそも認知症の周辺症状全般が、本人が事実と認識した上でとった本人にとって合理的な行動な訳ですから、幻視幻聴も他の4群項目同様に「場面や目的から見て不適切な行動か否か」で判断するのが妥当だと考えるに至りました。

このことは調査員テキストの第4群の調査上の留意点として記載してある内容を見ても明らかです。

 

幻視・幻聴がある場合は関連項目で評価し、一次判定に反映させるべき

前月の“今月の話題12月|調査項目3・4群は認知症の状態像を拾えているのか?”にも書きましたように、調査項目の定義に合致しない周辺症状がある場合に、関連した項目で「ない」を選択して特記事項に具体的な状況を記載しただけでは、1次判定は当然ながら、2次判定でも介護の手間が評価されずに介護度にも反映されない可能性があります。これは幻視・幻聴の場合も同様です。

介助の手間がない場合でも、また、テキストに記載してある項目の定義から多少外れていても「場面や目的から見て不適切な行動」がある場合は関連項目で評価・選択し、特記事項に選択理由をキチンと記載して可能な限り1次判定に反映させるべきだと思います。これは認知症の診断がない場合でも同様です。

そのうえで、審査会で1次判定が妥当かどうかの判断を仰ぐことが状態像に合った要介護度判定の基本ではないかと思います。

現場の認定調査員の方々はこれらのことを経験上わかっており、それゆえにテキストの留意事項通りではなく、関連項目で評価しているのではないかと私は考えています。