話題|座位保持の背上げ角度についてアンケート結果

座位保持

座位保持は、認定調査員が判断に迷う項目の一つになっており、第1群では「麻痺等の有無」「拘縮の有無」に次いで多いようです。

判断に迷う理由として、座位保持の定義が医学的なものと違うことが挙げられます。

医学・理学療法・看護・介護における「座位」とは

下肢を水平にして上半身を90°に起こして座っている状態。

「ベッドの端に腰を掛ける姿勢を『端座位』、椅子や車いすに腰かけ、足の裏を床につく姿勢を『椅座位』、上体を起こし、床や寝具の上で両足を伸ばして座る姿勢は『長座位』と呼ぶ」となっています。

上半身を支えることについて、背もたれなどの道具を使う事や手を付くことには言及はなく、何らかの方法で上半身を90°に起こして安定した姿勢でいられる状態を「座位」と呼ぶようです。

また、医学・看護では仰臥位で下肢を水平にしたまま上半身を45度程度上げた半座位の体位を「ファーラー位」、上半身を1530度起こした姿勢を「セミ・ファーラー位」と呼びますが、この場合は座位ではなく、「姿勢」と評価しているようです。

厚労省の日常生活機能評価表における座位

一方、厚労省が病院の看護必要度や回復期リハビリテーション、一部市町村での自立度の評価基準としている「日常生活機能評価表」(2008年3月)の座位の項目では“背上げ角度が60度以上”を目安に「できる」または「支えがあればできる」としています。

             日常生活機能評価表(抜粋)

要介護認定における座位の定義

しかし、調査員テキストでは
①長期間(概ね1か月以上)にわたり水平位しかとったことがない。
②医学的理由により座位保持が認められていない。
③背骨や股関節、腰などの拘縮や痛みがあって体幹の屈曲ができない。

上記3つの場合に「できない」を選択するとなっています。

座位以外にも介護保険独特の解釈があり、また、各保険者間でも解釈に若干の違いがあり、基本的に保険者の判断になりますが、上体を起こす角度に制限がある場合に、調査員としては座位保持と判断できるのか迷うのではないでしょうか。

今回は、保険者間でも解釈に違いがある「座位保持」について、アンケートを行った結果をお知らせします。

アンケート

アンケートはSNSで行い、参加者数は22名と少なめでしたがその結果は以下のようでした。

質問:1-5座位保持について、できないとするのは以下のどれですか?

条件1:調査員テキストにある①長期間にわたり水平位しかとっていない②医学的理由で座位保持が認められていない③背骨や股関節の状態により体幹の屈曲が出来ない 場合のみ

条件2:背上げ角度に制限があり(医師の指示、または介護上の理由で)概ね30°以下の場合

条件3:背上げ角度に制限があり(医師の指示、または介護上の理由で)概ね45°以下の場合

条件4:特に角度は決めていないが、背上げできる角度が緩やかな場合

アンケート結果:総数22

アンケート結果、まとめ

・座位保持角度について、SNSでの全国の認定調査員に対するアンケートでは、できないと判断するのは、調査員テキストにある3つの状態の場合が最も多く、15名(68%)であった。

それ以外では、約30°以下の場合は4名、約45°以下の場合が2名、角度は決めていないが背上げ角度が緩やかな場合が1名であった。

この背上げ角度については、あくまでも調査員個人の判断基準を聞いたものであり、保険者の判断基準かどうかは不明です。

また、この中の2人(2市)について直接聞き取りを行った結果、「30°以下、45°以下との数字があったのでその角度で判断したが、具体的に基準とする角度が決まっている訳ではない」との事でした。そのことを考慮すると、条件1以外の方は、条件4の“特に角度は決めていないが、背上げできる角度が緩やかな場合”に該当するとしている方が多いのかもしれません。

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