話題|新型コロナウィルスによる要介護度への影響

更新申請の調査は有効期限延長で対応

新型コロナウィルスは介護業界にも甚大な影響をもたらしています。

サービス利用の停止や制限、施設入所者の面会禁止などが行われ、利用者のADL低下や精神の不安定などが心配されています。

介護認定調査に関しても、多くの市町村では更新申請・調査が停止となり、要介護認定有効期間を最大12か月延長するなどの対応をとっています。

私の場合、認定調査だけを専門に行っていますので調査依頼は激減しました。
それでも区分変更や通常通り更新調査を行っている感染者のいない市町村からの依頼が数件ありますのでそれを丁寧にやっている状態です。

介護施設などでの調査は、検温やマスク着用はもちろんですが、施設内に入れてもらえずに施設玄関のスペースで起居動作の確認をしたり、対象者の居室に入れないために寝返りや起き上がりの確認動作を見せてもらえず、職員の方から日ごろの状況を聞き取って評価するなどしている状態です。

不要不急な外出の自粛が要介護度に影響

今回の新型コロナウィルス禍は要介護度にも影響しています。

5月に調査を行った中で、現在要介護1のAさんが更新調査で1次判定が非該当に、同じく現在要介護1のBさんが更新調査で1次判定が要支援1になったケースがありました。

2人ともADLやBPSD関連は前回調査時とほとんど変わっていないのですが、新型コロナウィルスの影響でここ1か月間は外出機会がなくなっていました。
普段なら2人とも少なくても月1回は受診などのために外出していたのですが、それも自粛となり、飲み薬は家族がもらって来ていました。

試しに2人の1次判定を「2‐12外出頻度」のみ選択肢を変えてシミュレーションしてみると
Aさん:月1回未満の場合→要介護認定等基準時間 23.5分 非該当
    月1回以上の場合→要介護認定等基準時間 28.6分 要支援1

Bさん:月1回未満の場合→要介護認定等基準時間 31.5分 要支援1
    月1回以上の場合→要介護認定等基準時間 33.7分 要介護1

となりました。

同席者から聞き取った通り「2‐12外出頻度」を月1回未満のままで調査票を提出し、1次判定がそのまま2次判定になればAさんはサービス利用ができなくなり、Bさんがもしもグループホームを利用していたら利用できなくなります。

このため、私はA・Bさんともに、本来であれば外出しているであろう「月1回以上」を選択して調査票を提出することにしました。

調査項目を事実と異なる評価をすることは、違法であるとともに申請のたびに要介護度が変わる可能性があり、特に利用限度月額を目いっぱい使って生活を維持している対象者本人や家族の生活に大きく影響するのですべきではありません。

しかし、今回の「2‐12外出頻度」の選択肢については状態像や介護状況に対する評価を歪曲した訳ではなく、新型コロナ騒動がなければ2人とも月1回は外出していたのですから適切な評価に反しているとは言えないと考えました。

皆さんも経験があると思いますが、要介護度が軽度の場合に「2‐12外出頻度」の選択肢で1次判定の要介護度が変わる可能性が高いです。

注:外出頻度が1次判定にどのように反映されるかは、当サイト2019年8月の話題「外出頻度は1次判定にどれほど反映されるか」で取り上げていますので興味のある方はご覧ください。

まとめ

新型コロナウィルスによる外出自粛が、要介護度が軽度の方の1次判定に影響し、介護度が軽く出る可能性が高いです。
可能であれば調査票を提出する前に1次判定のシミュレーションを行い、その判定結果を確認することをお勧めします。

個人的には、定期的に外出していた方が外出自粛している場合などは、2-12外出頻度について自粛前の外出頻度で選択することも止むを得ないと考えます。