話題|障害高齢者・認知症高齢者の日常生活自立度と1次判定
障害高齢者・認知症高齢者の日常生活自立度の選択肢に悩むのは時間の無駄?
認定調査票の最後にある、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度は、選択肢を選択する際に悩むことも多いですが、他の調査項目のように一次判定の判定基準である「要介護認定等基準時間」を推計する8つの樹形モデルの分岐には使われていませんし、「特別な医療」項目のように、選択肢自体に直接のケア時間が設定されてもいません。
という事は、悩んで選択しても1次判定には反映されていないという事でしょうか?
今回はこの障害高齢者・認知症高齢者の日常生活自立度が一次判定にどのように反映されているかを見てみたいと思います。
認知症高齢者の日常生活自立度は〈要支援2か要介護1かの判定〉に使われる。
一次判定の要介護度判定で、要介護認定等基準時間が32分以上50分未満であった場合、「要支援2」と「要介護1」のいずれかに振り分けられる訳ですが、この振り分けは「認知機能の低下の評価」と「状態の安定の評価」によって行われます。
認知機能の低下の評価
介護保険制度では、要介護1に該当するのは要介護認定等基準時間が32分以上50分未満の場合で「認知機能や思考・感情等の障害により予防給付の利用に係る適切な理解が困難である場合」となっています。
”予防給付の利用に係る適切な理解が困難である場合”とは、具体的に言えば「予防給付は利用者の主体的な取り組みがなければ十分な効果が期待できない」ので、一定の介護が必要な程度の認知機能の低下がある場合は予防給付の利用は難しい、さらに具体的に言えば認知症高齢者の日常生活自立度がⅡ以上に該当するような症状や行動が見られる方は予防給付には適さないという考えです。
ここで認定調査員が選択した「認知症高齢者の日常生活自立度」が、一次判定ソフトの要支援2か要介護1かの計算に使われる訳です。
状態の安定の評価
振り分けのもう一つの評価である「状態の安定の評価」は、一次判定ソフトに1群∼5群の中の項目で構成される「状態の安定性判定ロジック」というものがあり、それで判定されています。
採用されている項目や計算方法については当サイト話題18年11月「要介護認定”要支援2と要介護1”はどこで分かれるのか?」を参照してください。
障害高齢者の日常生活自立度と認知症高齢者の日常生活自立度は「認知症加算」の計算に使われる。
認知症加算は、運動能力の低下していない認知症高齢者に対し、樹形モデルで算出された要介護認定等基準時間に介護の手間としての時間が加算されて一次判定が行われる仕組みです。
この「運動能力の低下していない認知症高齢者」に該当するかの判定は
①障害高齢者の日常生活自立度がJまたはA
②認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ、ⅣまたはM
③加算される前の要介護認定等基準時間が70分未満
①~③すべてに該当し、かつ、該当する項目を計算して得られたスコアが基準を超えた場合に要介護区分が
1段~2段階上がるシステムです。
該当する項目やスコアーについては当サイト話題18年12月「介護認定における認知症加算とは?」を参照してください。
障害高齢者及び認知症高齢者の日常生活自立度は一次判定に大いに関係している
このように、障害高齢者の日常生活自立度・認知症高齢者の日常生活自立度は一次判定での要支援2か介護1かの判定、認知症加算に該当するかの判定に関わっており、悩んで選択するのに十分見合ったものであることが判ります。
なお、障害高齢者の日常生活自立度は要介護認定のために作られたものではないために、寝たきり度で評価するべきか、車椅子使用など移動移乗の状況で評価するべきかなど、判断に迷う場合があります。
そしてその評価基準については保険者によって若干の違いがあるようなので私は保険者に確認するようにしています。