話題|概況欄の書き方を考える

 

概況欄について

スタンダードな認定調査票では下図のようにⅣとしてページの最下段に記入欄がありますが、ほとんどの市町村では指定したフォーマットでの記入となっており、特記事項の上段に記入欄を設置している場合が多いようです。

この欄は「概況」「特記すべき事項」「置かれている環境等」「特記事項」などと呼ばれ、名称は統一されていませんが以下に続く各項目の特記事項と関連する、なくてはならない欄です。

Ⅳ欄に記載すべき事項

・家族状況
・居住環境
・要介護状態の主な原因となる疾患と心身の状況
・使用している装具や器機等
・介護サービスの利用状況
・その他

この欄については、当サイト18年10月の”認定審査会に伝わる特記を書く”コーナーで取り上げたことがありますが、今回もう一度掘り下げて考えてみたいと思います。なお、文中ではこの欄を「概況欄」として説明します。

今回はテキストに記載してある「記載すべき事項」の他に気を付けたい点を取り上げます。

1.概況欄に記載する内容は審査会の参考資料として扱われ、1次判定を変更する根拠にはならない。

私自身は利用者を持たずに委託での利用外の認定調査のみを行っているため、依頼される対象者の前回認定調査は99%私以外の調査員さんが行ったもので、その調査票を目にする機会が多くあります。

記載された概況欄を見ると、テキストにある記載すべき事項の他に、具体的な介護の手間や認知症状また今後利用したいサービスなどを記載しているのを見かけます。

介助が必要な生活状況を説明したい気持ちは理解できますが、見出しにあるようにこの欄に具体的な生活状況を記載しても1次判定の変更理由にはなりませんから、概況欄では大まかな介助状況のみを記載して、具体的な手間は該当する項目にキチンと記載するべきです。

審査会で議論されて1次判定の変更に関わるのは、あくまでも項目ごとの特記事項または主治医意見書に記載された介護の手間であることを理解しておく必要があります。

2.概況欄に記載する疾患や既往歴などは、現在の要介護状態に関連したものだけにする。

概況欄には現在の要介護状況の主な原因となった疾患名の記載は必要ですが、現在の状況には関連しない既往歴や治療中の疾患名を記載してあるのを見かけます。これは読む側を惑わせる原因になる場合があります。

認定審査会では概況欄に記載してあることは現在の要介護状態の原因となるもの、あるいは現在の生活に支障や影響があるものとは推察しますから、概況欄に疾患名や既往歴の記載があればそれに伴う介護の手間があるのでは?と考えるのが自然です。

もし特記事項の中に概況欄に記載した病名と関連する記載がない場合は「記載漏れ」があるのではないかと疑問に思われる可能性があります。

例えば、過去に脳梗塞を発症して現在も薬を内服しているが日常生活の支障となるような後遺症がない方の概況に「脳梗塞の既往がある」と記載してある場合、認定審査会は身体機能・起居動作が掴まることなくできることや、生活機能に対して介助が行われていないことに疑問を持つかもしれません。それが照会につながる可能性があります。

たとえ大きな病気や手術をしていても現在の身体・生活状況に影響していなければ省きましょう。

概況欄を含む特記事項は介護の手間を記載するものであり、主治医意見書の内容とは必ずしも合致しません。概況欄に記載する疾患や既往歴を主治医意見書に寄せる必要はありませんから、あくまでも現在の要介護状態に関連したものだけにしましょう。

3.前回調査と居住環境などが変わっている場合は記載する。

対象者が介護サービスを利用したい、現在も利用している場合は今後も要介護認定調査は継続的に行われ、その要介護度は対象者や家族にとって大きな関心事です。

これに関連して、審査会事務局からの照会の中に「前回の調査では介助されていたが、今回の調査では介助されていないになっている。間違いありませんか?」というのがあります。

前回調査と評価が異なる理由の一つとして、対象者の居住環境や利用しているサービス内容が前回調査時と変わっている場合があります。このことを概況欄に記載していないと先の審査会事務局からの照会のような結果になってしまいます。

また、項目ごとの身体状況や介護の手間などは規定の期間の情報で良いのですが、もっと長いスパンで徐々に起きている心身の変化の情報なども概況欄に記載してあると対象者の状態像の理解につながると思われます。

この他、今回の新型コロナの影響で特殊な状況下で認定調査が行われた場合など、その状況の記載があれば次回の認定調査の参考になります。

4.概況欄の書き方は、前編・後編の2冊に分割された小説の後編冒頭にある“前編のあらすじ”と思うべし。

小説が前編・後編に分かれている場合はほとんどの場合、後編冒頭に、登場人物の紹介と関係性、物語の背景やこれまでの流れなどが要約されて書いてあります。これを読むことで前篇を読んでいない人でも後編の物語を理解することができます。

概況欄はまさしくこの“前編のあらすじ”と同じで、これを読むことでそれに続いて記載してある特記事項の各項目の選択肢や特記を理解し易くする役目をします。これはあくまでも「あらすじ」ですから詳細に書く必要はなく、特記事項に出てくる状況が分かる程度に書いてあればOKです。

概況欄などは数をこなしていくと記載内容とその表現方法などに自分のスタイルが出てくるものです。自分が書いたものを読み返して納得のいく内容にする作業を繰返すことで概況や特記の記載も苦にならなくなります。

5.まとめ

対象者の生活状況などを大まかに記述する概況欄は、その下に続く各項目の選択肢や特記事項を理解するために不可欠な欄です。言ってみれば前編・後編に分けて書かれた小説の冒頭にある前編の要約”これまでのあらすじ”のような存在です。

この欄に記載された内容は1次判定を変更する根拠にはならないので、認知症状や介護の手間などの記載は大まかで良く、具体的な手間と頻度などは特記事項にキチンと記載しましょう。

この欄に記載する疾患名や既往歴などは、現在の生活や要介護状態に関連するものだけにします。概況欄に、下に続く特記事項に関連しない病名などがあるとかえって読む側を混乱させてしまう可能性があります。

前回調査時との居住環境などが違っている場合や、いつもと違う状況下で認定調査が行われた場合はその状況を記載しましょう。そうすることで選択肢が違っている理由が理解できたり、次の認定調査の時の参考になります。