認定調査項目を読み解くPart2|座位保持・両足での立位保持

1-5 座位保持 


1.調査項目の定義

座位保持の能力を評価する項目です。

ここでいう「座位保持」とは、背もたれがない状態での座位の状態を10分間程度保持できるかの能力です。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状態に関する聞き取り内容で選択します。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・座位の状況(椅子・畳の上など)、座り方(端坐位、長座位など)は問いません。

・コルセットなど、装具や福祉用具を使用している場合は使用した状態で判断します。

・要介護認定において「座位保持ができない」とするのは、医学的な座位の考えとは異なり、基本的に次の3点です。

長期間(概ね1か月以上)にわたり水平位しかとったことがない。
医学的理由により座位保持が認められていない。
背骨や股関節、腰などの拘縮や痛みがあって体幹の屈曲ができない。

②の“医学的理由により座位保持が認められていないケース”は次のような場合が考えられます。

・起立性低血圧があり、支えがあっても60度以上に上体を起こすことができない
・臀部や仙骨部に褥瘡があり、臀部に荷重すると痛みがある、褥瘡が悪化する
・肛門周囲の術後で、創部の安静のために荷重できない  など

自力では座位保持できないが、“介護者から支えてもらう” “背もたれにもたれる”場合は「支えてもらえばできる」になります。

・実際に行った確認動作と日頃の状況が異なる場合は一定期間(過去概ね1週間)のより頻回な状況で選択し、特記事項にその状況と選択根拠を記載します。

4.ポイント

・“自分の手で支えればできる”とは上半身を支えるために手や腕に荷重している状態を言います。

・日頃の状況で選択する場合は、日頃の座位姿勢ではなく、座位保持できる能力について聞き取り選択します。
例えば、「日頃車椅子に乗っており、その際は背もたれにもたれている」場合でも、食事の際などは背もたれにもたれることなく10分以上座位を保っている場合は「できる」あるいは「自分の手で支えればできる」と評価します。

・介護者や同席者の中には、要介護認定での座位保持の定義を理解していない方がいます。特に対象者が寝たきりの場合などは選択肢について説明し、誤解の生じないようにすることをお勧めします。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記記載例

ケース・記載例選択肢選択理由
ベッドに手を付けば座位保持可能できる軽く手を付く状態の場合は「できる」を選択します。もしベッドに手を付いて上半身を支えている状態の場合は「自分の手で支えればできる」が該当し、その場合特記には「支える」と表現すべきです。
長時間は不安定だが、ある程度は支えなく保持できるできる「できる」と評価したわけですが、特記の「ある程度」の表現は解釈の違いがあるので、定義にある分数などで記載するべきです。
大腿や座面に手を付きながら座位保持ができる。自分の手で支えればできる軽く手を付く状態ではなく、上半身を支える状態が該当します。
背もたれの必要はないが、両腕を座面について支える必要がある自分の手で支えればできる選択基準の通り
脳出血後遺症で上肢の不随運動があり姿勢が崩れる。座位も介助者が傍らで常に姿勢を整える必要がある。支えてもらえればできる安定して座位保持が出来ない状態ですが、「できない」には該当しません。
座位では前に倒れてしまうために常に長座位の姿勢にする必要がある。椅子に座る場合はシャワーチェアーの上に足を上げて座位保持している。支えてもらえればできる特記内容が前のめりになることの説明になっていますが、座位保持には何らかの支えが必要なことが判ります。
介助者の支えがないと後ろに倒れてしまう支えてもらえればできる選択基準の通り

 

前回の座位保持の記事

 

1-6 両足での立位保持

1.調査項目の定義

「両足での立位保持」の能力を評価する項目です。
ここでいう「両足での立位保持」とは、立ち上がった後に、平らな床の上で立位を10秒程度保持できるかの能力です。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・立ち上がるまでの行為は含みません

・片足の欠損や拘縮のために床に片足が着かない場合であっても、着いている片足で項目の定義(平らな床の上で立位を10秒程度保持できる)の行為ができれば「できる」と評価します。

・「何か支えがあればできる」は自分で何かにつかまる場合であり、介助者の支えは含まれません。介助者の支えが必要な場合は「できない」を選択します。

・装具や福祉用具を使用している場合は、使用している状態で判断します。

・実際に行った確認動作と日頃の状況が異なる場合は一定期間(過去概ね1週間)のより頻回な状況で選択し、特記事項にその状況と選択根拠を記載します。

4.ポイント

・選択基準にある「支え」は手すりやテーブルなどの“掴まるもの”を指します。介助者による支えではありません。

・何にも掴まらず、あるいは何かを支えにして又は掴まって、自力で10秒程度立っていることが出来るかで判断します。立位保持のために腕や体幹を支えるなどの介助が必要な場合は「できない」と判断します。

・日頃自力で立ち上がりが出来ない場合でも、介助で立ち上がれば両足での立位保持ができる場合が多いですから安全を確保した状態で実際に行ってもらうようにします。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記記載例

ケース・記載例選択肢選択理由
ズボンの上げ下ろしの短い時間は掴まらずにできる。できる動作の確認を行わずに選択したものと思われますが、「短い時間」の表現は解釈の相違があるので「10秒間」などの具体的な状況を記載するべきです。
訪問時はやってもらえなかったが、日頃トイレの際は手すりに掴まってズボン上げ下ろしの間は立位保持できると聞き取る。支えがあればできる具体的な特記でわかりやすいと思います。
介助で立ち上がれば、介助者の両手を掴んで立位保持できる支えがあればできる引き上げ介助ではなく介助者の手を支えにして保持できる場合は該当します。
腰椎圧迫骨折による腰痛があり常時コルセットをしている。コルセットをすれば歩行器に掴まって立位保持できる支えがあればできる日頃コルセットを使用している場合はその状況で選択します。
手すりに掴まっても自力で立ち上がることが出来ず介護者に両脇を抱えられて立ち上がっている。10秒程なら何とか立位保持可能。支えがあればできる何かに掴まって自力で立ち上がっている状況と思いますが、介助者の支えを受けて立位保持しているとも受け取れる記載です。その際は「できない」になりますので自力なのか介助なのかがわかるように記載すべきです。
右大腿骨頚部骨折が原因でベッド上生活。右足に荷重できず、何かに掴まっても左足だけで立てるのは1~2秒のみ。できない片足でも10秒間立位保持できる場合はできる或いは支えがあれば「できる」と評価しますが、この場合は「できない」の選択となります。
掴まり立ちするもかなり不安定で施設職員が支える介助をしている。できないできないと評価した状況は判りますが、介助の方法の特記になっているので能力での記載にするべきです。

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