認定調査項目を読み解く Part2|歩行・立ち上がり

1-7 歩行

1.調査項目の定義

「歩行」の能力を評価する項目です。
ここでいう歩行とは、立った状態から継続して歩くことができるかどうかの能力です。立った状態から継続して5m程度歩ける能力があるかどうかで選択します。

 

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・這って移動する、いざって移動するなど、立位になれない状態の場合は歩行とは評価しません。

・歩行ができない状態とは以下の①~③のような状態をいいます。
①掴まっても介護者に支えられても自分では歩けない
②5m連続して歩けない
③医学的理由または安全のために歩行が制限されている

・下肢などに問題があって歩行に支障があるかで判断します。視力不良のために歩行に支障をきたしている場合は基本的に該当しません。

・リハビリとして理学療法士などが付き添ってのみ行っている場合は出来るとは評価しません。

・補装具や福祉用具を使用している場合は、使用している状況で評価します。

・実際に行った確認動作の状況と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況においてより頻回な状況で選択します。その場合、実際に行ってもらった状況と日頃の状況、選択した根拠等を特記事項に記載します。

4.ポイント

・能力的には掴まらずに歩ける場合でも転倒の不安から杖などを使用している場合があります。能力で判断した場合は「つかまらないでできる」となりますが、日頃から「杖がないと不安で歩けない」状態であれば、日頃の状態で選択します。

・「つかまらないで出来る」を選択して、「2-2移動」の項目で「見守り」や「一部介助」を選択しているような場合は、特記事項に実際の歩行状況と日頃の歩行状況を記載し、介助が必要な理由を記載して両項目間の整合性がとれるようにします。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記の記載例

ケース/記載例選択された選択肢注意点
現在入院中で、尿カテーテルを留置している。歩行は片脇介助されて歩くことが出来る。つかまれば可注:記載はないが看護師が尿バッグを持ち、もう片方の手で対象者の腕を支えて歩行している状況だと思われます。腕支えがないと歩けないのであれば「できない」を選択するべきです。
歩行は日頃1本杖を使用しているが、訪問調査の際は杖なしで安定して歩くことが出来た。つかまらないでできる注:動作確認で杖なしで歩けたわけですが、「日頃1本杖を使用している」との記載があると、より頻回な状況から「つかまれば可」の選択が適切という事になります。「できる」を選択するのであれば、杖を使用しているが日頃から杖なしでも歩けることを記載するべきです。
日中のみ歩行器を使用するがまだ車椅子も併用している。頻度的には車椅子のほうが多い。つかまれば可選択理由:能力項目ですから問題ないと思います。
入院中で、両手で手すりを掴んで歩くが1~2mが限界で、不安定である。(2-2移動は見守り等を選択している)できない注:連続して5m歩けない状態と思われますが、移動との整合性がとれないのでどちらかで状況の説明が必要と考えます。
視力不良でほとんど見えずふらつきもある。一人で歩くとぶつかったりするので一人で歩くのは困難。できない注:この項目は下肢に問題があって歩行に支障があるかで判断します。視力不良の場合はこれに該当しません(選択基準参照)。また、動作確認を行って判断すべきと思います。
介護者に手を引いてもらい10m歩行可能。(2-2移動は一部介助を選択)つかまれば可注:手を引いてもらわないと歩けないのか疑問が残ります。つかまれば可と判断したのであれば「介助者の手をつかんで」と表現したほうが良いでしょう。
現在入院中で、看護師の腋窩支持のもと、点滴スタンドに掴まりながら歩いている。(2-2移動は一部介助を選択)つかまれば可注:看護師の脇支えがないと歩けない状態であれば「できない」を選択するべきです。
現在入院中で、尿カテーテル留置のため移動時は点滴スタンドに尿バックを下げてスタンドに掴まって歩いている。尿バックを持ってもらえば掴まらずに歩ける。つかまらないでできる選択理由:能力項目であり、状態像からも妥当な判断と思います。
脳梗塞による左麻痺がある。左足に装具を使用し杖歩行している。摺り足で、1歩進むたびに立ち止まるため連続の歩行とは言えない。できない選択理由:連続して5mは歩けない状態と判断したようです。あとは審査会の判断に任せましょう。

前回の歩行の記事

 

 

1-8 立ち上がり

1.調査項目の定義

「立ち上がり」 の能力を評価する項目です。
ここでいう 「立ち上がり」 とは、 椅子やべツド、車いす等に座つている状態から立ち上がる行為を行う際に (床からの立ち上がりは含まない)、 べツド柵や手すり、 壁等につかまらないで立ち上がることができるかどうかの能力です。

膝がほぼ直角に屈曲している状態からの立ち上がりができるかどうかで選択します。

2.選択肢の選択基準

調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・普段畳上の生活で椅子に座る機会がない場合や、実際に行ってもらう際に椅子がない場合などは、洋式便器や受診時の待合室での状況などで評価します。

・自分の体の一部を支えにして立ち上がる場合や、 習慣的ではなく体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立ち上がる場合 (加重しないと立ち上がれない場合) は 「2.何かに掴まればできる」 を選択します。

.実際に行った確認動作の状況と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択します。

その場合、 調査対象者に実際に行つてもらった状況と 日頃の状況、 選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。

4.ポイント

・膝がほぼ直角に屈曲した姿勢となる椅子などを使って確認します。

・能力で評価する項目ですが、普段できないことを頑張ってする方もいるので、日頃の状態を介護者に確認します。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記の記載例

ケース/記載例選択肢選択理由/注意点
手すりを掴んで立ち上る時と引き上げ介助が必要な時と半々。最近は介助されることが多い。(2-1移乗は見守りを選択)できない注:動作確認をするべきです。また日頃の状態から選択したのであれば、移乗との整合性がとれません。
認知症があり、近くの物に掴まって急に立ち上がる時がたまにある。しかし日頃は指示が通らず職員から引き上げ介助を受けている。(2-1移乗は一部介助を選択)できない注:この場合は「能力はあるが必要な行動がとれない」ケースと思われます。この場合も動作確認をするべきであることと、日頃の状況を介助者に聞き取る際は状況ではなく立ち上がる能力について確認し選択するべきです。
座面に手を付きながら立ち上がる。つかまれば可注:「つかまれば可」の状態とは、身体の一部を支えにする、テーブルや椅子の肘当などを掴んでしっかりと荷重して立ち上がる場合です。特記には「支える」「荷重する」などと表現したほうが良いと思います。
パーキンソン病による症状の日内変動があり、午前中はほとんど身体が動かず立ち上がりもできない。訪問調査は午後に行い、立ち上がりも掴まらずにできた。つかまらないで出来る選択理由:頻度で判断して妥当と考えます。パーキンソン病の方の場合は状況の日内変動の特記記載は必須です。
床から立ち上がる際は前にある食卓テーブルなどに手を付く必要があるが、椅子からはつかまることなく立ち上がれる。つかまらないで出来る選択理由:膝がほぼ直角に曲がった状態からの立ち上がり動作で評価します。

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