認定調査項目を読み解くPart2|つめ切り・視力・聴力

 つめ切り

1.調査項目の定義

「つめ切り」 の介助が行われているかどうかを評価する項目です。
ここでいう 「つめ切り」とは、「つめ切り」の一連の行為のことで、「つめ切りを準備する」「切ったつめを捨てる」 等を含みます。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・切ったつめを捨てる以外の、つめを切った場所の掃除は含みません。

・四肢のつめがないなどで行為自体が発生しない場合は、四肢の清拭などの代替行為で選択します。

・調査日から概ね過去1か月の状況において、より頻回にみられる状況で選択します。

・概ね過去1か月間で介助の方法が変わった場合、身体状況などを勘案して選択し、状況を特記事項に記載します。

4.ポイント

・施設や病院などで、本人につめ切りの能力があるにも拘らず介助されている場合は、能力だけで不適切な介助の方法とはせず、総合的に判断します。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記記載例

ケース/記載例選択肢選択理由/ポイント
約1か月前からショートステイ利用。爪切りは手も足も施設職員の介助を受けているが、自宅にいる時は自分で切っていたとのこと。能力勘案し「介助されていない」を選択。介助されていない爪切りは介助の方法で評価する項目です。病院や施設利用の場合は能力があっても介助されている場合がありますが、この場合は能力の有無をもって現在の介助の方法が不適切とはせずに、総合的に判断して選択するというのが一般的な考え方です。この場合も「何らかの理由があって介助が行われている」と判断し、能力勘案ではなく実際に行われている介助の方法で選択するべきです。
手の爪は自分で切って妻が手直しをしている。足の爪は妻が切っている。一部介助この場合対象者が切った所を切り直している状態ではないので一部介助に該当します。
自発的に爪切りすることはなく、施設職員が道具を準備して声掛けすれば自分で切る。一部介助爪切り道具の準備は一連の行為である「爪切りの準備」に該当するので一部介助になります。
認知症があり、自分で爪切りするがきれいに切れていない場合がある。爪切りの際見守りはしていないが、終わった後に家族がきれいに切れているか毎回確認している。一部介助爪切りの際に付き添っていなくても、爪切り後にきちんと切れているか確認が行われている場合は見守りに該当し、一部介助と評価します。

 

 

 視力

1.項目の定義

「視力」(能力)を評価する項目です。
ここでいう「視力とは、見えるかどうかの能力です。調査員が実際に視力確認表(図1)を対象者に見せて視力を確認します。

図1視力確認表

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・十分な明るさの下で、実際に認定調査員テキストに付属する視力確認表を見せて確認します。

・日頃眼鏡やコンタクトレンズを使用している場合は、使用した状態で確認します。

・原則として、視力確認表を正面に置いた状態で確認することとし、脳梗塞による視野欠損または緑内障による視野狭窄がある場合でも正面で見た状態で評価します。

・視力確認表での確認が出来なかった場合は、一定期間(過去概ね一週間)の状況において、より頻回にみられる状況や日頃の状況で選択します。その際は介護者などから聞き取った内容や選択根拠などを特記事項に具体的に記載します。

4.ポイント

・基本的に遠方視力(遠くを見る能力)で評価します。

選択基準では新聞・雑誌の字が見えるか否かや日常生活に支障がないかどうかが問われていますが、50歳を過ぎたら皆新聞や雑誌の字は見にくくなります。それを老眼鏡などで補っており、これはいわば聴力の補聴器のようなものです。

しかし、老眼鏡が補聴器と決定的に違うのは「この道具を使うとどこでも見えるようになる訳ではない」という点です。具体的には老眼鏡によって近くに焦点が合い、近くは見やすくなるが遠くは逆に見えなくなるという事です。

介護認定を受けている高齢者の場合はメガネを使わずに手元も遠くもどちらも良く見えている人はいません。しかしはっきり見えていなくても不便を感じない、日常生活に支障がない方は多くいます。

結論として、テキストの選択基準にある「新聞・雑誌などの字が見え、日常生活に支障がない」は参考にとどめ、基本は視力確認表が室内の端のほうでも見えるかどうかで判断し、見えていれば「普通」、見えなければ1m、さらに目の前に近づけて見えるかどうかで判断するのが妥当と考えます。

なお、認知症などで視力確認表が理解できない場合や眼を開けてくれない場合などは、日常生活に支障がないかを聞き取って選択することになります。

・基本的には調査員テキストにある視力確認表で確認します。

・視力確認表での確認が出来なかった場合は、食事の際はどのようにして食べているかなど、日頃の状態を聞き取り評価します。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記記載例

ケース/記載例選択肢選択理由/ポイント
緑内障がありぼやけて見えるとのことだが、視力確認表では通常の距離で見えていた。普通「通常の距離」の意味は1m以上離れているという事だと思いますが、テキスト上では通常の距離と言う表現はしていないので「1m以上離れても見える」あるいは日常生活に支障がないと記載するべきです。
現在施設入所中。視力は日常生活に支障のない程度に見えていると職員から話あり。普通能力項目については実際に行ってもらい確認することが基本です。確認できない場合は聞き取りを行って選択することになっています。施設入所者は施設の状況が判っているので、はたから見ると支障がないように見える場合が多いので注意すべきです。
確認表を見ることが出来た。普通見ることが出来る距離の記載をするべきです。
視力は普通で、生活に支障はない。普通確認を行ったうえでの記載であればこの表現で良いと思います。
視力確認表を見せても何であるか理解できないが、壁掛けの時計を見て今何時であるかを言える。普通妥当な選択と思います。
眼鏡使用で細かい文字も見えている普通視力の評価は基本的には遠方視力での評価です。視力確認表での確認も行うべきです。
新聞などの細かい文字は虫眼鏡を使用している。1m離れた確認表が見えるこの選択肢を選択した理由が判りにくいですので、まずは視力確認表での確認を行うべきです。
調査の際は声をかけても目を閉じたままで開けようとしない。職員に確認すると視線は合うとのことから「1m離れた確認表が見える」とした。1m離れた確認表が見える視線が合う=1m先がみえる、とは限らないので、これ以外に評価できる事実がない場合は判断不能とするのが良いと思います。
結膜炎があって痛みがある。午後からは見づらくなるとのことから選択した。1m離れた確認表が見える選択根拠が選択基準に該当しません。日常生活に支障がない状態ではないが、目の前に置かないと見えない状態でもないことからの選択と思われます。この場合は視力確認表を見せて選択するべきです。
眼底疾患があり明るさのみが分る程度で、視力確認表は目の前でも分からない。ほとんど見えない妥当な選択と思います。
グループホーム入居中。調査の際は声掛けしても追視は見られず。日頃は追視が見られるが意思疎通が困難でどの程度見えているかは不明との職員談あり。判断不能妥当な選択と思いますが、食事の場面などで視力の程度が判る行動がないかを聞き取る方法もあると思います。
視力確認表を見せると「絵が描いてある」と返答し、認知症があり意思疎通は出来ない。判断不能視力確認表を用いた選択ができない場合は、日頃の状況を聞き取って判断するのが良いでしょう。それでも判断できない場合は「判断不能」と評価して良いのではないでしょうか。

 

 

聴力

1.調査項目の定義

「聴力」(能力)を評価する項目です。
ここでいう 「聴力」 とは、聞こえるかどうかの能力で、認定調査員が実際に確認して評価します。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・補聴器を日常的に使用している場合は、使用した状態で判断します。

・聞いた内容を理解しているかは問いません。

・聞こえているかの判断は、会話のみではなく身振りや音に対する反応などを含めて行います。

4.ポイント

・「普通」以外の選択をした場合は、その具体的な状況を特記事項に記載します。

5.判断に迷うケースと間違いやすい特記記載例

ケース/記載例選択肢選択理由/ポイント
聞き返しがあり、普通の声でハッキリ話すと聞き取れる。普通の声がやっと聞き取れる普通の声で話したことに対して聞き返しがある、意識的にはっきりと話す必要がある、などの場合はこの選択が妥当と考えます。
現在施設入所中。施設のホールの皆の中でざわついていると聞こえない。普通の声がやっと聞き取れるテキストでは「評価の妨げになるような雑音のある場所での調査・評価は避ける」となっていますので、この場合は適切な選択とは言えません。
耳元で大きな声でやりとり可。かなり大きな声なら何とか聞き取れる簡潔な表現ですが、状況は理解できます。
認知症で意思疎通ができず「判断不能」を選択する。聞こえているか判断不能評価は会話のみでなく、反応や身振りなども含めて行うことになっています。日頃の大きな声や音に対する反応の聞き取りと、その状況の特記記載があればBetterと思います。