認定調査項目を読み解く Part2|口腔清潔・洗顔・整髪

2-7 口腔清潔

1.項目の定義

口腔清潔の介助が行われているかどうかを評価する項目です。
ここでいう口腔清潔とは、歯磨きなどの一連の行為のことで、「歯ブラシや口すすぎ用の水を準備する」「歯磨きを歯ブラシなどに付けるなどの準備」「義歯を外す」「歯や義歯をみがく」「口すすぎをする」などのことです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照


3.選択の際の留意点

・洗面所への誘導、移動の介助、及び洗面所周辺の掃除などは含めません。

・義歯の場合は、義歯の清潔保持に関わる行為で評価します。

・歯磨き粉をブラシにつけない、口腔洗浄剤を使用している、などの場合も口腔清潔に含みます。

・時間帯や体調によって介助の方法が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去一週間)の状況においてより頻回な状況で選択します。

・介助されていない状況や、実際に行われている介助の方法が不適切と判断した場合は、適切な介助の方法を選択し、不適切とした理由と選択根拠を特記事項に記載します。

4.ポイント

・「歯がないにも拘らず義歯を使用していない」「歯磨きをしていない」場合、不適切かどうかは、その事によって日常生活に影響しているかどうかで判断します。

・見守りに該当する行為は「常時の付き添いがあり、指示・声がけ・確認が行われている」場合ですが、この他に、口腔清潔の場合は「常時の見守りはされていないが、口腔清潔行為中の状況確認や声がけ、終了後に磨き残しがないか確認が行われている」場合も含みます。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース/特記記載例選択された選択肢選択理由
自分の歯はなく、義歯も使っていない。麻痺があり、口すすぎもできないために食後は口すすぎの代わりにトロミをつけたお茶を介護者が口に運び、それを飲み込むことで清潔を保っている。介助されていない飲み込む行為は口腔清潔の行為には含まれていないために介助には該当しない
歯磨きに常時の付き添いはないが、介護者が毎回歯磨き後に磨き残しの確認をしている一部介助常時の付き添いがなくても、歯磨き後に磨き残しの確認が行われている場合は見守りに含まれ、一部介助に該当する
歯磨きは声がけが行われている。一部介助歯磨き行為中の声がけ・確認は見守りに含まれますが、行為を開始するための声がけは見守りには含まれません。この特記だけでは一部介助か判断がつきません。
対象者は日頃歯磨きはしておらず、食後は家族が口腔洗浄剤を準備し、対象者はそれで口すすぎをしている一部介助口腔洗浄剤での口すすぎは口腔洗浄に含まれ、その準備は介助に該当する
歯はなく義歯も使用していない。食後は介護者が水を準備して口まで運び、本人は口すすぎと吐出しのみ行っている全介助実際に発生している口腔清潔行為に対し、対象者が口すすぎと吐出しのみ行い、それ以外は介助されていることから選択する
自歯はなく、義歯も使用していない。むせるために職員が口腔内を清拭しているが、抵抗して口を開かないために時間がかかる。全介助全介助であっても、具体的な介護状況の記載があると介護の手間が分かりやすい。

 

2-8 洗 顔

1.項目の定義

洗顔の介助が行われているかどうかを評価する項目です。
ここでいう洗顔とは、洗顔の一連の行為のことで、一連の行為とは、「タオルの準備」「蛇口をひねる」「顔を洗う」「タオルで拭く」「衣服の濡れの確認」などの行為をいいます。また、「蒸しタオルで顔を拭く」ことも含みます。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・洗面所への誘導、移動介助及び洗面所周辺の掃除などは含めません。

・洗顔の習慣がないなど、行為自体が発生しない場合は類似行為で代替え評価します。

・時間帯や体調によって介助の方法が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去一週間)の状況においてより頻回な状況で選択します。

・介助されていない状況や、実際に行われている介助の方法が不適切と判断した場合は、適切な介助の方法を選択し、不適切とした理由と選択根拠を特記事項に記載します。

4.ポイント

・施設入所や入院中などで、能力があるにも拘らず介助が行われている場合があります。
この場合は能力がある事をもって「不適切な介助の方法」とはせず、状況や生活環境などを総合的に考えて判断します。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース/特記記載例選択された選択肢選択理由
独居で、意欲低下のために起床後の洗顔はほとんどしていない。しかし、入浴の際に顔を拭いており不適切な状態ではない介助されていない洗顔の習慣がない場合は、類似行為(この場合は入浴時の顔拭き)について評価し選択する
脳梗塞による片麻痺がある。洗顔の一連の行為は自分で行っているが、洗顔のたびに洗面台の床を濡らすために家族がその都度拭いている介助されていない洗面所周辺の掃除などは洗顔の一連の行為に含まれない。状況を特記事項に記載する
上肢麻痺があり洗顔の際に服を濡らしてしまう。そのため家族が毎回服が濡れていないか確認している一部介助洗顔に伴う衣服の濡れの確認は見守りが行われていると評価する
必要な物品を準備しても自分ですることはなく、職員から促されている。何をしたらいいか判らないために職員が傍で一つ一つ声がけや身振りで教えている。全介助介護の手間がかかっていることは理解できるが、行われている介助は必要物品の手渡しと声がけなので「一部介助」となる
施設入所中で、能力的にはタオルを渡すと自分で拭けると思われるが、理解力低下で拭くのに時間がかかるために職員が毎回蒸しタオルで顔を拭いている全介助介助の方法が適切か否かについては、能力がある事のみで不適切な介助の方法とは判断せず、状況や生活環境などを総合的に考えて選択する。この場合も不適切な介護とは言えず妥当な選択です

 

2-9 整 髪

1.項目の定義

整髪の介助が行われているかどうかを評価する項目です。
ここでいう整髪とは、「ブラシの準備」「整髪料の準備」「髪をとかす」「ブラッシングする」などの整髪の一連の行為のことです。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点

・洗面所など鏡のある所への誘導、移動介助及び洗面所周辺の掃除などは含めません。

・頭髪がない、または短髪で整髪の必要がない場合は、入浴後にタオルで頭を拭くなどの類似行為で代替え評価します。

・時間帯や体調によって介助の方法が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去一週間)の状況においてより頻回な状況で選択します。

・介助されていない状況や、実際に行われている介助の方法が不適切と判断した場合は、適切な介助の方法を選択し、不適切とした理由と選択根拠を特記事項に記載します。

4.ポイント

・自分でブラシなどを使わずに手ぐしで整えている場合、それで整髪なっているのであれば、これを整髪行為として評価します。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース/特記記載例選択された選択肢選択理由
入院中で、ショートカットのため日頃は手ぐしで簡単に髪を整えているのみ。週2回の入浴の際は毎回看護師が整髪の一連の行為を全て介助している介助されていない手ぐしで整えて不適切な状態でなければその行為を整髪とみなし、介助が行われる頻度から選択する
ベッド上生活で、頭髪がなく整髪を行っていない。家族が濡れタオルを渡すと自分で顔と頭を拭いている一部介助タオルで頭を拭く行為を整髪行為と考え、タオルの準備が介助されていることから選択する
整髪するという意識がなく、洗髪後にのみ家族が整えている。全介助日ごろ整髪行為がない場合はこのような選択になります
認知症があり自発的に整髪は行わない。家族がブラシを渡しても前髪をかき上げるのみのため、家族が全体をやり直している全介助対象者が整髪した部分を含めてやり直していることから選択する

 

– 後書き –

口腔清潔、洗顔、整髪は介護者の身体的負担が比較的少ないことから特記事項での介護の手間の記述は少なくなりがちです。

一次判定で要介護度の基準となる「要介護等基準時間」は8つの樹形モデルから算出されますが、洗顔、整髪の2項目は中間評価項目得点の「2群:生活機能」として樹形モデルの分枝に関わってはいますが、単独項目としては樹形モデルには関わっていません。ですから介助の方法で選択する項目の中では、比較的「要介護等基準時間」への影響が少ない項目といえます。

その一方、「口腔清潔」の項目は中間評価項目得点の「2群:生活機能」と共に「生活機能」「排泄」「食事」「BPSD関連行為」の4つの樹形モデルにも単独で関わっており、「要介護等基準時間」算出への影響は大きくなっています。