話題|「洗顔」の選択肢が一次判定にどれだけ影響するかを検証する
先月の当サイト”話題”のコーナーで「口腔清潔」の選択肢が一次判定にどれだけ影響するかを検証しました。今回も同様に整容の一部であり、他の身体介護に比べて比較的介護の手間が少ない「洗顔」の選択肢が一次判定にどのように影響するかを検証してみました。
今回も前回の口腔清潔と同じやり方でシミュレーションを行いましたが、前回よりも各要介護度でケースを1例ずつ増やして各要介護度4ケースでシミュレーションを行いました。
「洗顔」の選択肢を変えて1次判定シミュレーションを行った。
今回も先月同様に実際に各介護度で洗顔の介助の方法の選択肢を「介助されていない」「一部介助」「全介助」とした場合、要介護認定等基準時間にどの程度違いが出るのか、そして一次判定の要介護度に影響するかをシミュレーションしてみました。
<ケースの選択>
過去に自分が行った調査の中から、要支援1~要介護5の7段階のそれぞれの要介護度で出来るだけチェック項目が偏っていない4つのケースを計28ケースを選びました。
なお、下の認定情報の画像は各要介護度のケース1の画像です。
<シュミレーション方法>
1つのケースにつき、洗顔の項目のみ選択肢を「介助されていない」「一部介助」「全介助」に変えて一次判定シュミレーションを行い、その要介護認定等基準時間を算出しました。
要支援1のケース1 要支援2のケース1
要介護1のケース1 要介護2のケース1
要介護3のケース1 要介護4のケース1
要介護5のケース1
<各ケースでの要介護認定等基準時間>
※「介助されていない」との比較で5.0分以上の差がある場合は赤字記載
<結果>
「洗顔」項目は単独では一次判定の樹形モデルの分岐には関わらない。そのため洗顔項目単独の介護量が多くても2群の生活機能項目全体の中間評価項目得点が低くないと要介護認定等基準時間は増えない。
注)中間評価項目得点は自立度が高いほど高くなり、分岐では要介護認定等基準時間が少ない方向へ進む。
身体介護量の比較的少ない軽度者の場合は2群全体の中間評価項目得点も高い傾向にあるので、洗顔項目の介護量が多くても要介護認定等基準時間は増えず、要介護度への影響はほとんどない。しかし中・重度者の場合は2群の身体介護量も多くなるので、洗顔の選択肢が要介護度に影響してくる可能性がある。
<まとめ>
一次判定の要介護度は、8つの樹形モデルを使って算出される「要介護認定等基準時間」で決まる。樹形モデルでは、項目単独で分岐に関わる場合と、単独では関わらずに項目群全体の「中間評価項目得点」として分岐に関わる場合がある。
整容項目(洗顔、整髪)は単独ではこの樹形モデルには関わらずに2群全体の「中間評価項目得点」として関わっている。そのため整容項目の選択肢は2群の身体介護量と比例して影響度を増し、具体的には要介護度が軽度の場合は介護度にほとんど影響を与えないが、中・重度の場合は介護度に影響する可能性が高くなる。
また、この整容項目とは違う結果となっているのが口腔清潔で、単独で3つの樹形モデルに関わっているので、軽度・重度者に拘わらず要介護認定等基準時間に影響を及ぼしています。