話題|介護認定審査会の簡素化の近況

介護認定審査会の簡素化の近況

当”話題“コーナーでは過去に2回にわたり認定審査会の簡素化について記事を投稿してきました。

今回5月8日付で厚労省老健局から都道府県介護保険課と各保険者に対して、介護保険最新情報として「介護認定審査会の簡素化に関する取り組み事例の周知について」のタイトルで、認定審査会の簡素化取り組み事例の通知がありましたので、その紹介と調査員としての対応について投稿したいと思います。

なお、認定審査会の簡素化については過去の投稿で詳しく解説していますのでご覧ください。

2018年8月 話題 要介護認定制度の見直し

2021年8月 話題 認定審査会簡素化の現状

 

1.公表されている最新の認定審査会の簡素化実施状況(R元年10月アンケート結果。~要介護認定業務の実施に関する調査研究・令和2年3月みずほ情報総研より~)

注)下記のグラフは認定審査会の業務簡素化についてのアンケート結果で、「認定審査会の簡素化」と「認定有効期限36カ月まで延長」のいずれも実施して割合。「認定有効期限36カ月まで延長」はどの保険者も実施していると思われるので、実質的に認定審査会の簡素化の実施状況を反映している。

ちなみに、私が認定調査委託契約をしている保険者に聞き取りした結果では認定審査会の簡素化を実施していない保険者は1か所のみでした。

2.今回通知された内容の一部

 

 

この通知の内容は、人口規模の異なるA~Fの6保険者において、認定審査会の簡素化がどのような状況でどのような方法で行われているか、また、簡素化を行ってどのような結果があったかなどの4項目について紹介しているものです。

具体的には下記のような項目があり、6つ保険者について、この4項目について具体的な状況が紹介されています。

1.保険者の人口規模と審査件数および簡素化実施件数、審査合議体数や審査時間などの情報

2.簡素化導入の経緯と、審査会員に対してどのような事前調整が必要であったかの情報

3.簡素化対象の選定方法や事前配布の有無、対象者の審査の実際についての情報

4.簡素化に対する審査会委員の意見や課題、実施したことによってどのような効果があったかなどの感想

3.この通知で注目したいところ

今回の取組み紹介事例の全例で、審査会委員に簡素化対象者について1次判定結果や有効期間などの必要事項を記載した一覧表を事前配布しており、かつ簡素化対象者の認定情報の事前配布も行っている保険者が2件あり、認定情報の事前配布を行っていない保険者が4件でした(事前配布を行っていない4件の内1件は通常審査でも事前配布を行っていない)。

そして事前配布を行っていない場合は、簡素化対象者の一覧表の確認をもって2次判定とみなすことが了解されているようです。

簡素化の有無に拘わらず、審査会に諮る前には審査会事務局で調査票と特記事項はチェックされている訳ですが、事前配布が行われない簡素化対象者は、調査員が記載した特記事項が認定審査会委員の目には触れないことになります。

4.まとめ

この通知の目的は、横のつながりのない各保険者に認定審査会簡素化の事例を紹介するとともに、まだ簡素化を実施していない保険者に対し簡素化を促す狙いがあると思われます。特に後者については全例で審査件数の減少や審査会の時間が短縮されたなどのポジティブな記載がされていることからその意図がうかがえます。

特記事項については、具体的な介護の手間を記載することで手間の多少を評価して2次判定に反映する重要な役割がありましたが、審査会の簡素化でその記載が反映される可能性は少なくなりそうです。また、実際に行われている介助が適切かどうかの判断にも影響しそうです。

特記事項については、チェックする認定審査会事務局の判断に大きく影響されるようになりますが、簡素化対象であっても疑義がある場合は審査会に諮るのが原則となっているので、記載する調査員としては、選択肢に迷った事や介助の方法が一般的なものより多い場合などはその具体的な状況を記載するだけでなく、「判断に迷った」「一般的な介助よりも手間がかかっている」などの記載をして審査会委員の目にも触れるようにすることが必要になっていると思います。