話題|審査会事務局からの照会は特記の書き方を改めて考える好機

審査会事務局から照会は嬉しくないが…

 今回は、認定調査員としては来て欲しくない審査会事務局から照会についてです。

 ある程度の自信をもって提出した調査票と特記事項について、審査会事務局から確認や質問のいわゆる照会の連絡が来るとテンションが下がります。

 私の場合FAXで来ることがほとんどですが、項目の定義や選択基準は理解しているつもりだし、特記の表現にも気をつけている。だから選択間違いや疑問点はないと思うんだけど…と考える訳です。

 実際に照会内容を見ると単純な選択ミスであったり調査票の確認担当者の勘違いであったりしますが、なかには頻度の記載がなかったり、定義を拡大解釈していたりで、調査員側の記載に問題がある場合が少なくありません。そして、その照会があったことで今まで気づかなかった間違いに気づかされることもしばしばです。

 今回は、審査会事務局から調査員への問い合わせ、いわゆる“照会”は、記入ミス以外ではどのような時に行われるか、また、行うことになっているのかについて、その内容が審査会委員テキストに載っていますので抜粋して紹介したいと思います。

1.審査会事務局からの照会には、「連絡」と「照会」の2種類がある。

 審査会事務局からの照会は、特記と選択肢の不整合や記載内容の問い合わせの確認だけではありません。

 特記記載間違いや選択肢の誤りなどの明らかな単純ミスの場合は、認定審査会の判断で選択肢を修正することが出来ることになっており、この場合は確認ではなく「選択肢を変更します」という審査会事務局からの連絡になります。

 皆さんの中にも審査会事務局からFAXが来て、「〇〇について、特記内容から『介助されていない』に変更させて頂きます。なお、この連絡についての返信は不要です。」などの連絡を受けたことがある方がいると思います。

 また、認定調査員が現在の介助の状況が不適切と判断した場合はその理由を記載した上で調査員が適切な介助の方法を選択することになっていますが、特記事項や主治医意見書の記載をもとに審査会が認定調査員と異なる選択をした場合は審査会の判断で修正できるとなっており、この場合も確認ではなく連絡になります。

 次に、認定調査項目の選択に矛盾を認めた場合や適切な判断か否か疑問がある場合などは認定調査員へ問い合わせが行われ、この場合は確認となります。

 ちなみに、審査会事務局では認定調査票と主治医意見書が揃った時点で認定調査票の確認を行いますが、アンケートなどによると特記内容の照会や修正を含めた、調査票1件当たりの確認作業には平均22分かかるそうです。

2.審査会で確認が必要とされているのはどんな時か

 認定審査会では、以下のような場合は調査を行った認定調査員に対して確認を行うことになっています。

①能力項目で、実際に試行した結果と聞きとった日頃の状況が違う場合に、特記事項や主治医意見書の記載から聞きとった状況がより頻回な状況と言えるのか疑問がある場合

②介助の方法で、特記事項や主治医意見書の記載から、より頻回に見られる状況で選択していないと考えられる場合(介助の方法が混在している場合など)

③特別な医療項目で、特記事項や主治医意見書の記載から、妥当な選択がされていないと考えられる場合

④障害高齢者/認知症高齢者の日常生活自立度の評価に、特記事項や主治医意見書の記載から、明らかな誤りがあると考えられる場合 

①~④のいずれかの場合、審査会事務局から認定調査員に確認を行い、そのうえで必要な場合は特記記載の内容を修正、あるいは基本調査項目の選択肢を変更することになります。

 これ以外に、特記事項に「判断に迷った」と記載がある場合は、審査会の場で認定調査員の選択が妥当かを審査期事務局が審査会委員に問うことになっています。


3.審査会事務局からの照会を回避するには

 審査会事務局からの照会で自分の思い込みや間違いに気づくというプラス面はあるにしても、特記の記載不足や間違いはなくすべきですから照会は少ないに越したことはありません。

では、事務局から照会を回避するためにどのような対応をするべきでしょうか。

①能力項目で、実際に試行した結果と日頃の状況が違う場合

→ 例えば、訪問時は寝返りができたが、日頃は行っていないと介護者から聞き取ったと記載があり「掴まってもできない」を選択しているような場合。この場合は行動ではなく、あくまでも能力で評価したことが解かる、根拠と状況の記載をしましょう。

②介助の方法の項目で、より頻回な状況で選択していないと考えられる場合

→ 例えば、移動の項目などで、普段自室で過ごしている方が、自室内では移動の介助はされておらず自室から出る際に介助を受けていると記載があり、「一部介助」を選択しているような場合。このような場合はどちらの移動機会が多いかその頻度など、根拠となる具体的な状況を記載しましょう。

③特別な医療の項目で、妥当な選択がされていないと考えられる場合

→ この場合は、基本調査項目の特記との整合性、行われている医療の継続性、実施頻度、実施者を、褥瘡の場合は部位も記載しましょう。

④障害高齢者/認知症高齢者の日常生活自立度の判定に誤りがあると考えられる場合

→ この場合は、関連する基本調査項目との整合性はもちろんですが、判定理由の特記には、実際に特記事項に記載してある具体的な状況を載せる必要があります。

 例えば、認知症高齢者の日常生活自立度の場合、3・4群の特記には何も記載がないのに、「認知症状があるため/○○が出来ずに介助が必要」などと記載するのは適切ではありません。あくまでも基本調査項目の特記事項に記載してある、具体的な状況を記載しましょう。

まとめ

・特記記入や選択の誤りなど、明らかな単純ミスの場合、また、現在の介助の状況が不適切と判断した場合に、審査会が認定調査員と異なる選択をした場合は調査員に確認することなく審査会で選択肢の修正ができ、その場合は審査会事務局からの連絡となる。

・能力項目・介助の方法の項目で、頻度で選択した場合は、選択した根拠がわかるようなそれぞれの状況と介助の方法の頻度の記載は必須。

・特別な医療の項目では、基本調査項目の特記との整合性、行われている継続性、実施頻度、実施者を、褥瘡の場合は部位の記載は必須

・障害高齢者/認知症高齢者の日常生活自立度の判定は、基本調査項目の特記に記載してある具体的な状況をもとに行い、判定の特記はその中のものを記載する。

 審査会事務局からの照会は気持ちの良いものではありませんが、定義や選択基準の間違った思い込みや特記の書き方に自分では気づかないバイアス(偏り)があることを気付かせてくれます。照会は良い機会とポジティブに捉えましょう。