話題|特記に書いても要介護度に反映されない事とは?

特記に書いても要介護度に反映されない事とは?

Ⅰ.特記と概況の違い

特記と概況の違いは、特記は一次判定結果の変更の理由になりますが、概況はなりません。

特記は対象者の具体的な状態像(身体・認知機能や介助の必要性)の情報であり、概況は対象者の社会生活を含めた全体像の情報です。全体像では介護の手間や必要性は判断できないので一次判定結果の変更の理由にはならないのです。

Ⅱ.認定審査会の二次判定で一次判定結果を変更する理由にならない特記内容

認定審査会の二次判定では、特記事項または主治医意見書の記載内容から、通常の例に比べより介護の手間を多く要する(少なくてすむ)と考えられる場合は、審査会で“介護の手間にかかる審査判定”で議論・評価され、要介護度に反映されることになっています。

認定調査票に関しては、各項目の特記事項の記載内容が審査対象になるわけですが、審査会では審査判定のルールがあり、特記に記載された内容であっても一次判定の変更理由にならないものがあります。

今回は、この「審査会で一次判定の変更理由にならない特記の記載内容」について紹介します。

1.変更理由にならない特記の内容

①特記事項に具体的な記載がない(根拠がない)もの

「認知症があるので手間がかかる」などの記載があるものの、具体的な介護の手間が記載されていない場合は、一次判定の変更理由にはなりません。

②介護の手間にかかる時間とは直接的に関係ないもの

「高齢のため」「時間を要する」などの抽象的な記載は一次判定の変更理由にはなりません。高齢であることによって、介護の手間が発生している場合は、それを基本調査項目の特記で具体的に明らかにする必要があります。

③住環境や介護者の有無

住宅環境、独居、援助者不在など、必ずしも介助の必要性に繋がらない記載は一次判定の変更理由にはなりません。

概況調査に住環境などが記載してあれば、対象者の生活状況がより正確に把握できますが(例えば、エレベータのないマンションの4 階に居住している場合など)、実際に介護の手間が発生している場合は基本調査項目の特記で明らかにする必要があります。

また、独居など介護者の有無についても住宅環境と同様、概況調査に記載してあれば対象者の生活状況が把握できますが、そのことのみでは一次判定の変更利用にはなりません。

④ 本人の希望、現在受けているサービスの状況

本人の希望や現在受けているサービスは、申請者の心身の状況及び介護の手間と直接関係がないため、一次判定の変更理由にはなりません。

⑤意欲の有無

本人の意欲の有無は日常生活に影響しますが、意欲などの精神状態は個人差があり、そのことをもって一次判定の変更理由にはなりません。

意欲がないために実際に介護の手間が発生している場合は、それを基本調査項目の特記で明らかにする必要があります。

2.特記以外で、介護情報に記載があるものの要介護度に反映されないもの

・過去の審査判定資料及び判定結果

要介護認定は現在の状態に基づいて判定を行う制度であることから、過去の申請結果や調査結果との比較を理由に一次判定の変更を行うことはできません。

過去の調査結果や審査状況・判定結果は審査判定資料として記録に残りますが、これらの過去の審査会記録を理由に変更することはできません。(ただし、前回の要介護度が一次判定結果と著しく異なる場合などは、前回要介護度の判定理由や、主治医意見書の入院歴等を確認することは問題ないとされています)

Ⅲ. まとめ

特記に具体的な介護の手間ではなく、一般的な状況の記載のみがある場合は変更理由にはなりません。発生する介護の手間は個人差があるため、基本調査項目の特記事項に具体的な状況を記載することが必須です。

また、高齢であることや独居のために日常生活に影響や支障がある場合、住宅環境による生活の支障などは、その状況の記載だけでは一次判定の変更理由にはなりません。特記に具体的な状況を記載するとともに、現在の介護の状況を不適切として、適切と考える介助の方法を選択することが一つの方法となります。

現在の要介護度に至った過去の審査資料は認定情報として記録に残っていますが、要介護認定は現在の状態に基づいて判定を行う制度であることから、過去の審査状況は新たな申請の要介護度には反映されません。

注)この記事は「介護認定審査会委員テキスト」の内容を基にしています。

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