話題|審査会事務局から最近あった照会を見てみる

審査会事務局からの最近の照会

過去約3ヶ月にあった照会内容

状況特記内容項目/選択肢照会内容返答/ポイント
在宅で妻との2人暮らし。下咽頭がんで咽頭と喉頭を摘出しており、気管孔が開いている。発声の際は自分の指で気管孔を塞ぐ気管孔を自分の指で塞いで話すが、空気が洩れて何を言っているか分からない時が度々ある意思の伝達

時々できる
意思の伝達はその手段を問わず対象者が伝達できるかで評価し、失語症などが原因で会話が成立しなくても、本人の意思が伝達できる場合は「できる」となる。「気管孔の空気が洩れて何を言っているか分からない」場合はできないには該当しないと考えるが、状況を教えて欲しい照会者は「意思の伝達ができない」とするのは認知機能が低下して言葉が出て来ないケースなどを想定しており、認知機能低下がなければ何らかの手段を使って伝達できると考えている様子。特記に「日頃から言っていることが分からないことがあると同席妻から聞き取る」と書き添えるべきだったと反省した
同上ムセリが心配で固形物は食べないが豆腐や温泉卵程度は食べる。食事は医師処方の経腸栄養剤で、ストローを使って飲んでいる。妻は炊飯をしておらず、簡単な調理に該当するものはない。簡単な調理

介助されていない
特記からするとチェックミスと思われるが、「全介助」に訂正してよいか照会者は経腸栄養剤が食事であることが理解できなかった様子。再度簡単な調理に該当するものがないことを説明した
男性で、在宅でベッド中心の生活。頭髪は薄く、日頃ニット帽をかぶっている整髪は特にしていないが、髪が少なく不適切な状態ではない整髪

介助されていない
頭髪が少ないなど、整髪の必要がない場合は入浴後に頭部をタオル等で拭く行為などで代替評価しますが、代替行為はできるでしょうか?代替しての評価を教えてください短髪ではなく頭髪がない状態でもなく、代替え評価には該当しないケースであること、ニット帽を外した時は手で髪をなでていたと返答した。特記に「必要な時は自分で手で撫でている」と書き添えるべきだったと反省した
アルツハイマー型認知症があり、骨折後のリハビリで入院中。失認・失行があり、2群の項目はほぼ全介助になっている失行・失認があり、日常的に行っている行為もどうすべきか覚えておらず、その都度説明や介助の必要があるひどい物忘れ

ある
失認は対象を認識することが出来ず、失行は運動障害はないのに目的動作が出来ない状態ですので、日常の行為ができないのはこの症状によるものと思われます。物忘れによる行動自体は起きていないように読み取れますがいかがでしょうか?照会者は失認と失行についての医学的知識はある程度あるようですが、それが認知症が進行した状態とは考えていないようで、たぶん高次脳機能障害などに書かれた文献を見たと思われます。失行などは記憶障害が進行した状態であること、2群の介助の方法の特記も見て欲しい旨返答した
独居で、毎日小規模多機能施設の通いを利用している。認知症と下肢筋力低下があるリハビリパンツを使用し自分でトイレに行く。排尿行為は介助されていないが、毎回職員が尿失禁の有無を確認している。リハビリパンツの交換は介助されるが1日1回程度で済んでいる排尿
介助されていない
毎回失禁の有無を確認しているようですが、常時の付き添いの必要がある「見守り」「確認」「声掛け」ではないのでしょうか?当該保険者の認定調査員講習では「失禁の有無の確認行為のみは見守りに該当しない」との以前からの指導がある。この様に指導と矛盾した照会が時々ある。「排尿における見守りは排尿の一連の行為に対しての見守りであり、失禁の有無のみの確認は該当しないと考える」と返答した
脳出血後遺症で特老施設に入所している方。ベッド上生活で、胃ろうからの経管栄養が行われている座位のみ約45°のギャッチアップが出来て保持できる。それ以外の起居動作はできない。座位保持

支えてもらえばできる
テキストには明確な角度の規定はありませんが、当市では「45°程度は座位保持とはよべない」という見解でおります。「できない」に修正してよろしいですか?約半年前に行われた当該保険者の認定調査員講習では「今まではテキストに記載してある3つの場合のみ『できない』としていたが、検討の結果30°程度しか上体を起こすことが出来ない場合も『できない』と判断することになった」と指導があった。この点を含め、「チェックする事務局員によって判断が違う。個別に照会するのではなく、できないと判断する目安の角度を保険者の統一見解として調査員全員に通知して欲しい」と要望した
1年前から小規模多機能施設の連泊を利用。90歳超の女性で認知症がある。20年ほど前まで観光協会で働いていたことがある現実的な話はほとんど出来ないため話がまとまらない(4-2作話の特記に「職員の話では以前の観光協会で今も働いているとの認識で、『仕事に行かなきゃ』『バスに間に合わない』などと毎日繰り返し話す」の記載あり)話がまとまらない

ある
話の内容が次々と変わる、一貫性がないなどがあるか教えてください電話で照会者に質問の主旨を直接確認すると、「『話がまとまらない』の項目の定義では、話の内容に一貫性がない、話題を次々に変える、質問に対して無関係な話が続くなどとなっている。これには該当していないようなので照会した」とのこと。
照会者はテキストに記載がない表現は了解できないとの考えのようであったため、特記の記載を「今も仕事に行っていると思って話をすることが毎日あり、その際は非現実的な話を一方的にするので会話にならない」と変更することにした。そして照会者には「テキストに忠実なことは大事なことだが、あまりにテキストの記載にこだわり過ぎているように感じる。もう少し解釈の幅を広げてもらいたい」と要望した
クモ膜下出血後遺症で身体後遺症はないが記憶・判断力低下がある。特に短期記憶低下が顕著日常的にさっきしていたことを忘れ、途中で違うことを始めてしまう。3品テストは正答した。短期記憶

できない
できるかできないか悩んでしまう記載なので教えてください「できない」の選択であることを返答。3品テストの結果が予想外であったため記載してしまったことを釈明し、紛らわしい記載だったことを謝罪した
4人家族で日中は嫁と2人になる。認知症の疑いがあり、不潔行為や通販に勝手に注文するなどの行為があるTV通販で不要な健康食品を電話で注文することが月に1回ほどある。また、家族の洗濯物が入った洗濯機に便の付いた自分のパンツを入れていることが週に1回ほどある。これらのついて家族が訳を聞いたり注意すると「注文していない」「パンツを入れていない」などと取り繕い、しまいには何も話さなくなる。TV通販については家族が通販会社に事情を説明して返品し、また今後は本人からの注文を受けないように依頼した。自分勝手に行動する

ある
「洗濯機に便の付いた自分のパンツを入れていることが週に1回ほどある」と記載がありますが、例えば汚れた衣類は洗濯機に入れずにバケツなど別な場所に置いて欲しいと家族が説明しているのか教えて欲しい。また、何度も説明しているのに毎回忘れているのであれば「ひどい物忘れ」にも該当するのではと思いますがいかがでしょうか本人には家族に声をかけてくれるように言っているにも拘わらず勝手に入れてしまうとのことでした。また、この行為が言われたことを忘れるためか、言い出しにくくて言わないのかは分からないとの家族の話でした。なので「ひどい物忘れ」の対象にはしていません。と返答した
有料老人ホーム入居中で、アルツハイマー型認知症がある。経鼻経管栄養が行われ、尿カテーテルが留置されている。場所の理解はできておらず、日頃から家族の名前を大きな声で呼んでいるオムツ交換の際などに「自分では何もできなくなった」などと自分を卑下するようなことを言いながら泣きそうになることが週に2~3回ある。感情が不安定

ある
特記からはそぐわない場面とも不適切な行動とも言えないように思われます。詳細を教えていただけますか施設職員からの聞き取りでは、日頃は認知症の周辺症状がある一方、オムツ交換の際は泣きそうになるなど感情の落差があるとの話だったので「ある」を選択したが、「自分では何もできなくなったと泣きそうになる」感情の方がむしろ自然であると思われたため、選択肢を「ない」に変更し、特記については文末に「特記のみ」を追記してもらうように返答・依頼した

まとめ

今回紹介した照会例で、事務局側には

・「テキストに記載がないので該当しない」「テキストに記載のないケースなのでテキストに準拠して再評価をして欲しい」など、テキストに拘る解釈が目立つ
・医療用語や専門用語の理解が不十分
・照会者が保険者が出している見解と違う解釈をしている(事務局内で意思統一がされていない)

などがありました。

一方記載する側の反省として
・選択肢と相反する記載がある
・聞き取りした相手の考えをそのまま反映して選択する

などがありました。

事務局側には局内での意思統一などの要望を出す一方、記載する側として基本的なことをおろそかにしない、客観的な視線で評価する必要性を改めて感じました。