認定調査項目を読み解く|麻痺等の有無(後半)・拘縮の有無

1-1 麻痺等の有無(後編)

 

「選択肢6.その他」は、選択してもしなくても一次判定結果は変わらない

認定調査員テキストでは、「1-1麻痺等の有無」の項目で「その他」を選択するのは
①いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合
②上肢・下肢以外に麻痺がある場合
となっています。

実は[6.その他]は特記事項を記載するために設けられた選択肢で、「その他」を選択しても1次判定には影響しません。

なぜ「その他」を選択しても1次判定に影響しないのか?

一次判定(一次判定ロジック)の流れを図にすると以下のようになります。

図中の②5群ごとの「中間評価項目の得点」算出には、予め各基本調査項目の選択肢に付いているそれぞれの「中間評価項目の得点」を合計します。なお、この中間評価項目得点は自立度が高い程高く設定されています。

この中間評価項目の得点と下表にある「麻痺の種類」が樹形モデルの分岐に使われます。

麻痺の中間評価項目得点は調査員テキストの「麻痺等の有無」の選択肢ではなく、下表の麻痺の種類で判定されます。

麻痺の種類による中間評価項目得点表

麻痺の種類 中間評価項目得点
ない 6.5
左右上肢、左右下肢のいずれか1肢のみ 5.5
両下肢 3.9
右上下肢あるいは左上下肢 3
その他の四肢の麻痺 0

この表の「麻痺の種類」最下段"その他の四肢の麻痺"とは以下の場合が該当します。

①両上肢に麻痺がある場合
②上肢と下肢の麻痺があり、それぞれ左右別の場合
③四肢のうち三肢に麻痺がある場合
④四肢全部に麻痺がある場合

これで判るように、調査員テキスト「麻痺等の有無」の選択肢の「その他」にある「いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合」「上肢・下肢以外に麻痺がある場合」のどちらも中間評価項目得点の麻痺の種類には含まれていません。

すなわち「その他」の選択肢は一次判定に関わっていない、一次判定に反映されないのです。

選択肢「その他」が一次判定に関わらない理由は判りませんが、基本調査における麻痺の項目は上下肢の確認動作ができるか否かを評価するものであり、欠損や上下肢以外の麻痺については1群の1‐3寝返り~1‐9片足での立位に影響し、更には2群での選択肢にも反映されるとしているのではないかと思われます。

そして日常生活への支障については、介護の手間で選択する第2群で評価し、更に認定審査会の2次判定で考慮する流れになっているものと思われます。

麻痺の項目で「その他」を選択した場合は特記事項記載が必須

「その他」を選択した場合は一次判定の要介護認定等基準時間には反映されていないので特記事項記載は必須です。この場合は部位と状況、必要に応じて日常生活への支障などを特記事項に記載します。なお、具体的な介護の手間については2群の関連項目に記載します。

 

1-2 拘縮の有無

 

1.調査項目の定義

ここでいう「拘縮」とは、対象者が可能な限り力を抜いた状態で他動的に四肢の関節を動かしたときに、関節の動く範囲が著しく狭くなっている状況をいいます。

2.選択肢の選択基準

認定調査員テキスト2009(改訂版)参照


3.選択の際の留意点

・確認時には本人または家族の同意を得たうえで行う。

・日頃装具や介護用品、器具類を使用している場合は、使用している状態で選択する。

・股関節、膝関節などで人工関節置換術を行っている場合は確認動作の施行が可能か本人または介護者に確認してから行う。

・疼痛のために関節の動く範囲に制限がある場合はそれ以上は動かさず、そこまでの状態で評価する。

・四肢が欠損していることによって目的とする関節の確認動作が行えない場合は、欠損している関節とその他を選択する。

なお、肩・股・膝関節を含む欠損があって関節の確認動作が行えない場合は、該当する関節とその他を選択し、それ以外の関節の欠損の場合は「その他」のみを選択します。なお、いずれの場合も状況を特記に記載します。

<注意>
寝たきりの方の場合は、筋力低下によって肩関節が脱臼をおこしやすくなっているので、看護師や介護者に確認動作が可能かを確認した方が良いでしょう。

4.ポイント

肩関節、股関節、膝関節以外の関節の拘縮或いは四肢の一部に欠損がある場合は「その他」を選択しますが、この場合も「麻痺等の有無」と同様、中間評価項目得点に含まれないので「5.その他」を選択しても一次判定には影響しません。「その他」を選択した場合には特記事項に具体的な部位や状況を記載します。

・拘縮の有無で、可動域制限の「軽度」と「著しい」の判断については具体的な定めがありませんが、膝関節については4月の「麻痺の有無」で紹介したように(自治体の認定調査員等へのアンケート調査)「膝を真っすぐに伸ばした状態から約30度以上屈曲した状態で、他動的にもそれ以上伸ばすことができない」場合を「著しい可動域制限がある」「拘縮あり」と判断する目安にしている調査員の方が多いようです。

・可動域制限の角度の表現は、下肢の場合は麻痺等の有無における表現とは違いますから注意が必要です。

5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由

ケース 選択肢/選択理由
肘に軽度の可動域制限があり、最大限まで肘を伸ばした状態では腕は胸の高さまでしか上がらないが、、肘を曲げた状態では他動的に肩の高さまで上げることができる ない
肩関節の拘縮の有無は、他動的に腕を肩の高さまで上げられるかどうかで判断するもので、肘関節の状態は問わない
肩関節脱臼の既往があり、再脱臼の恐れがああるため医師から上肢を肩の高さまで上げないように指示されている 肩関節
医学的理由で確認動作ができない場合は該当する
右股人工関節全置換術の既往歴がある。2W前右股関節脱臼で入院し、現在は整復されて常時固定用装具を着けている。装具使用では確認動作ができない 股関節
装具を日常的に使用している場合は使用した状態で評価する
以前交通事故で下腿骨骨折の既往歴がある。その後遺症で膝の可動域制限があり、まっすぐには伸びるが、屈曲は他動的にも直角には出来ない 膝関節
膝関節を真っすぐに伸ばした状態から90度程度まで曲げることができない場合は制限ありとする
円背が強く、背が伸ばせない その他
他動的にも胸椎や腰椎の動く範囲に制限がある場合はその他を選択する

 

次回の読み解く項目は 1-3寝返り 1-4起き上がり です。

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