調査項目を読み解く ~7月~


7月の読み解く項目  1-5座位保持  1-6両足での立位保持

1-5 座位保持(能力)

1.調査項目の定義
座位保持の能力を評価する項目。
ここでいう「座位保持」とは、背もたれがない状態での座位の状態を10分間程度保持できるかの能力です。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状態に関する聞き取り内容で選択します。

2.選択肢の選択基準
調査員テキスト参照

3.選択の際の留意点
・座位の状況(椅子・畳の上など)、座り方(端坐位、長座位など)は問いません。
・コルセットなど、装具を使用している場合は使用した状態で判断します。
・「支えてもらえばできる」と判断するベッドのギャッチアップやリクライニング車椅子などの具体的な角度の定めはありません。
認定調査において「座位保持ができない」と判断するのは、医学的な定義とは異なり、基本的に次の3点です。
①長期間(概ね1か月以上)にわたり水平位しかとったことがない。
②医学的理由により座位保持が認められていない。
③背骨や股関節、腰などの拘縮や痛みがあって体幹の屈曲ができない。

4.実際に行った確認動作と日頃の状況が異なる場合は一定期間(過去概ね1週間)のより頻回な状況で選択し、特記事項にその状況と選択根拠を記載します。

座位保持も調査員が判断に迷う項目の一つ

各種のアンケートなどで座位保持は”判断に迷う項目”の一つに挙げられています。
基礎運動学によれば、基本的座位姿勢とは「上半身を直立位として、股関節と膝関節が90度屈曲して臀部と大腿後面で身体を支持し、足関節が0度で足底を床に接地している体位」となっています。
しかし、麻痺や筋力低下がある場合は介助なしでこの姿勢を保持するのは困難で、ベッド上ギャッチアップやリクライニングチェアの背もたれを使って何とか上半身を起こしています。
このような背もたれが必要な場合に、背上げ角度がどのくらいまでを「座位保持ができる」と判断するかに迷うのではないでしょうか。

座位保持の評価基準は”上半身を60度以上起こした状態を保持できるか”

厚労省が発出し、病院の看護必要度や回復期リハビリテーション病棟、また、一部市町村の介護施設で自立度の評価方法として使用されている「日常生活機能評価表」(2008年3月)における座位保持の判断基準は、「寝た状態から座位に至るまでの介助の有無は関係ない。さらに尖足・亀背などの身体状況に関わらず、『座位がとれるか』についてのみ判断する。ベッドなどの背もたれによる『支え』は、背上げ角度が大よそ60度以上を目安とする。」としています。
つまり背上げ角度を60度以上にすると姿勢が崩れて一人では座位を保持できない場合を「できない」としています。

注:この「日常生活機能評価」と要介護認定調査の選択基準は同一ではありませんが、座位保持以外の起居動作についても両者ほぼ同じ定義、選択基準となっていることから判断基準の参考としました。

しかし介護認定調査で「できない」と判断するのは認定調査員テキストの選択基準に記載された3つの状態のみです。
このことから、前述の「日常生活機能評価表」で一人で保持できる目安としている「背上げ角度が60度」未満であっても、「介護者が(肩や背を)手で支えれば60度以上の姿勢で座位を保持できる」同じく「座位保持具などの背もたれがあれば60度以上の姿勢で座位を保持できる」状況の場合は、「支えてもらえばできる」を選択することになります。

参考:座位保持具

また、車椅子使用=「支えてもらえばできる」ではありません。
日常的に車椅子を利用している方でも、10分程度であれば背もたれに寄りかかることなく座位保持できる方がいます。この場合は日頃の食事中の姿勢などを聞き取り、背もたれで身体を支えている状態かどうかで判断します。

医学的理由によって座位保持が認められていない場合とは

座位保持が「できない」と判断するのは、前述したように次の3点です。
①長期間(概ね1か月以上)にわたり水平位しかとったことがない。
②医学的理由により座位保持が認められていない。
③背骨や股関節、腰などの拘縮や痛みがあって体幹の屈曲ができない。
この②医学的理由により座位保持が認められていないケースは次のような場合が考えられます。
・起立性低血圧があり、支えがあっても60度以上に上体を起こすことができない
・臀部や仙骨部に褥瘡があり、臀部に荷重すると痛みがある、褥瘡が悪化する
・肛門周囲の術後で、創部の安静のために荷重できない

実際の訪問調査の際に、寝たきりで日頃は姿勢が崩れるので座位にしたことがない、リクライニング車椅子を使っても30度くらいまでしか上体を起こせない状態であり、介護者側は「座位にはなれない方」として状況を説明してくる場合があります。
このようなケースで「支えてもらえばできる」と判断した場合、認定結果が出た後に介護者側から実際の状況と調査結果が違うとクレームが来ないように、日頃は座位にはなっていないが能力的には「手で支える」または「保持具を使う」ことで60度以上で座位保持できると判断し、「支えてもらえばできる」を選択したことを介護者側に伝え、誤解が生じないようにすることが望ましいでしょう。

具体的なケース"座位保持"

ケース 選択肢/選択理由
腰痛がありコルセットなしではベッド柵などに掴まる必要があるが、コルセット着用すれば摑まることなく10分間は座位保持できる できる
装具や器具類を日常的に使用している場合は使用した状態で評価する
現在施設入所中。自力歩行ができず車椅子の生活。日頃食事や趣味の事をしている時は車椅子の背もたれに寄りかかることなく座位保持できている できる
車椅子の生活であっても、日頃手で支えたり背もたれに寄りかかることなく10分程度座位保持できれば選択する
テーブル上に手を置き、手で体を支えながら座っている 自分の手で支えればできる/手で支えないと座位保持できない場合は該当する
腰曲がりが強く、膝の上に両手を置き、腕に加重して座位を保持する 自分の手で支えればできる/身体の一部を支えにしないと座位保持できない場合は該当する
寝たきりで、経管栄養の際は毎回60度程度にギャッチアップし、姿勢が崩れないように脇をクッションで支える必要がある。 支えてもらえばできる
自分の手ではなく、クッションなどで支えて保持する場合は該当する
背もたれがあっても上体を30度以上にすると姿勢が崩れる為、介助なしでのギャッチアップやリクライニング角度は30度程度までしかできない 支えてもらえばできる/一般的に言う”座位”の姿勢にはなれない状態だが、介護者の手で背などを支えれば上半身は60度以上で保持できる場合は該当する
入院中で寝たきりの状態。起立性低血圧があり、起き上がりは経管栄養時のみで、ベッドのギャッチアップは30度までとの医師の指示がある できない
医学的理由で上半身を60度まで起こすことができないケース
調査の際はベッド柵を掴んで座位保持できたが、日頃は腰痛で10分間座位保持できず、食事も途中で横になるなどしながら食べていると聞き取る できない
実際に行った状況と日頃の状況が異なる場合は、一定期間のより頻回な状況で選択する

 

 

1-6 両足での立位保持(能力)

1.調査項目の定義
「両足での立位保持」の能力を評価する項目です。ここでいう「両足での立位保持」とは、立ち上がった後に、平らな床の上で立位を10秒程度保持できるかの能力です。

2.選択肢の選択基準
認定調査員テキスト参照

3.調査上の留意点
・立ち上がるまでの行為は含みません
・片足の欠損や拘縮のために床に片足がつかない場合は、ついた片足で項目の定義にある行為ができるかで判断します。
・自分の体の一部を支えにして立位保持する場合は「何かにつかまればできる」を選択します。

4.実際に行った確認動作と日頃の状況が異なる場合は一定期間(過去概ね1週間)のより頻回な状況で選択し、特記事項にその状況と選択根拠を記載する。

具体的なケース"両足での立位保持"

ケース 選択肢/選択理由
片麻痺があり、患側の膝は屈曲拘縮している。日頃から健側片足のみで身体のバランスを取って掴まらずに10秒間は立っていられる。両足を着こうとすると身体が傾くために何かにつかまる必要がある。 支えなしでできる/拘縮で床に両足がつかない、或いは両足をつくのが困難と判断し、「着いた片足で定義にある行為ができるか」で判断します。この場合は片足で10秒間立っていられるので「支えなしでできる」と評価します。
ふらつきがあり、腕に加重するほどではないが身近な物に掴まらないと不安で10秒間は立っていられない 何か支えがあればできる/腕に加重する状態でなくても、何かを支えにしないと10秒間立っていられない場合は該当する
下肢筋力低下があり、手すりに摑まっての立位保持も2~3秒のみしかできない。しかし介護者に両脇を支えてもらえば10秒間は立っていられる。 できない/「自分一人で出来る」かどうかが評価のポイント。何かに掴まっても一人では立っていられない、介護者によって身体を支えないと立っていられない場合は「できない」と評価します。

 

 

次回は1-7 歩行、 1-8 立ち上がり について読み解きます。

連日暑い日が続いてます。加えてW杯のTV観戦で寝不足ですが、涼しい顔して乗り切りましょう!

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