認定調査項目を読み解くPart2|外出頻度・意思の伝達
外出頻度
1.項目の定義
「外出頻度」を評価する項目です。
ここでいう「外出頻度」とは、1回概ね30分以上、居住地の敷地外へ出る頻度を評価するものです。
一定期間(調査日より概ね過去1ヶ月)の状況において、外出の頻度で選択します。
2.選択肢の選択基準
3.選択の際の留意点
・定期、不定期であるかや活動内容は問いません。また同行者の有無も問いません。概ね過去1か月内に実際に外出した頻度で選択します。
・徘徊は含みません。
・救急搬送、救急外来受診、転院は含みません。
・同一施設内、同一敷地内の移動は含みません(アパート、マンションも含む)
・入退院、施設入退所など、過去1か月の間に心身状態や環境が大きく変わった場合は、変化した後の状況で選択します。その場合、変化した後の期間が短くても実際の外出頻度で選択し、変化した状況などを特記事項に記載します。
・ショートステイなどのサービス利用や入院の場合、その日数に関わらず連続した1回の利用を1回の外出とします。
4.ポイント
・季節や天候などによって外出頻度が変わる場合であっても、概ね過去1か月に実際に外出した頻度で選択します。
・生活状況を評価するものですから、どの選択をした場合でも具体的な内容とその頻度を特記事項に記載します
5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由
ケース/特記記載例 | この特記での選択肢 | 選択理由 |
---|---|---|
2週間前に退院した。入院中は外出機会がなかったが、退院後は週1回外来受診している。 | 週1回以上 | 過去1か月内に状況が大きく変化した場合は、変化した後の状況で選択します。 |
4か所の医療機関にそれぞれ月1回ずつ通院しているが、必ずしも週1回ずつ行っている訳ではない | 週1回以上 | 毎週でなくても月単位で判断し、月に4回以上外出していれば週1回以上と評価します。 |
1か月内での外出はショートステイを1週間利用したのみ | 月1回以上 | ショートステイ利用日数に関わらず、1回の利用を1回の外出とします。 |
マンションに住んでおり、同じマンションの別階に住む友人宅に毎日安否確認を兼ねて行っている。それ以外の外出は月1回の通院のみ。 | 月1回以上 | 同一敷地内の移動は外出に含まれない。月1回の通院が該当します。 |
サ高住に住み、併設のディサービスに週2回行っている。この他にここ1か月内での外出はない。 | 月1回未満 | 同一敷地内の移動は含まれません。 |
入院中 | 月1回未満 | 入院中であっても、実際に外出があったか否かの記載は必要です。 |
座位保持も大変で、日頃薬は家族がもらうが、受診が必要な時はぎりぎりまで車のシートを倒して横になって待っている。 | 月1回未満 | 実際に過去1か月内に外出機会があったかを記載することは必須です。この場合、外出が大変な状況を特記記載したものと思われますが、この項目ではなく、2-1・2移乗・移動の項目の特記に記載するべきと考えます。 |
前回の認定調査項目を読み解く「外出頻度・意思の伝達」記事はこちら
意思の伝達
1.項目の定義
「意思の伝達」の能力を評価する項目です。
ここでいう「意思の伝達」とは、対象者が意思を伝達できるかどうかの能力です。
2.選択肢の選択基準
3.選択肢の留意点
・他の能力項目と違い、一定期間の定めはありません。
・言葉による会話が成立しなくても、何らかの方法で意思を伝達できる場合はその状況で選択し、その伝達手段も問いません。
・伝達する意思の内容の合理性は問いませんが、社会生活における「意思伝達」とは最低限伝達する相手が許容できる範囲の内容を伝えることと考え、この点を踏まえて評価・選択します。
・調査時の状況に加え、日頃の状況も併せて評価します。調査時の状況と日頃の状況が異なる場合は頻度から選択し、その状況を特記事項に記載します。
4.ポイント
・テキストでは、伝達手段と伝達する内容の「合理性」は問わないとしています
伝達内容の合理性を欠くとは、①伝える内容が間違っている、辻褄が合わない ②話を理解しておらず、期待した内容の返答が返ってこない ③一方的に話す などです。
<認定調査項目を読み解くPart1で紹介した例>
実際の調査で、認知症があり相手が話した内容が理解できずに全く的外れなことを言う方、意味不明なことを言う方を見かけます。この場合に「合理性は問わないが意思の伝達はできる」と評価できるのでしょうか?
例えば「身体の具合はどうですか?」との問いかけに対する返答が以下のような場合
Aさん「みんな私のことを心配してくれる。有り難い」
Bさん「あんた誰?、どこから来たの?」(何度も自己紹介したにも拘らず)
どちらも返答はしていますが質問には答えていません。
Aさんの場合「心配してくれる」と質問に関連することを言っており、許容できる範囲の返答といえます。他方Bさん場合は質問には無関係で且つ的外れであり、許容できる範囲の返答といえません。
このように、話す内容に関わらず「言葉を発することができれば意思の伝達ができる」と評価するのは妥当ではありません。
意思の伝達とは、「最低限、伝達する相手が許容できる範囲の内容を伝えること」と考えて評価すべきです。
・評価するポイントは3つ
①いつも伝えられるか?
②伝える内容に制限はあるか?
③相手によって伝えられない時があるか?
①いつも伝えられるか?
失語症などにより「言葉が出て来ない時がある」場合、体調によっては話ができない時がある など
②伝える内容に制限はあるか?
YES/NOで答えられる質問にのみ返答する、単語を言うだけで話の主旨が不明、痛みや排泄などの限定したことのみ伝えられる など
③相手によって伝えられない時があるか?
家族にのみ伝える、特定の人だけが理解できる など
5.選択に迷うケースの選択肢と選択理由
ケース及び特記記載例 | この特記での選択肢 | 選択理由 |
---|---|---|
簡単なことに対しては意思伝達可能 | 伝達できる | この場合は伝達する内容に制限があるので「時々伝達できる」に該当すると思います。 |
会話が噛み合わない時もあるが、質問に対して判らない、忘れたと答えることはできる | 伝達できる | 伝える内容に制限がなければ妥当な選択と思います。 |
ゆっくり考えながら答える。呂律が回らず言葉がはっきりしないが、妻は慣れたので内容を汲んでおり、支障はない。 | 伝達できる | 相手によって伝えられない時がある場合は「時々伝達できる」に該当します。 |
返答はするが、内容はちぐはぐで質問を理解できていない。 | 伝達できる | 伝える内容に制限がある状態と思われます。この場合は「ときどき伝達出来る」に該当します。調査時の状況のみで選択しているようですが、日頃の状況も聞き取りして評価すべきです。 |
自分の要求を伝えることが難しくなっているが、たまには問いかけに答えることが出来る。 | ときどき伝達できる | できる時と出来ない時がある場合は「時々できる」、稀にできる場合は「ほとんど伝達できない」の選択ですが、”たまには”は一般的に”稀にできる”の意味なので「ほとんど出来ない」に該当します。”たまには”の表現は曖昧なので使用すべきではありません。 |
発達障害があり周りの人に関心がない。質問に対して答えることはできるが複数人の会話に混ざることはない。 | ときどき伝達できる | 状況によってはできる時と出来ない時があるに該当しますので妥当な選択です。 |
記憶力の低下があり、家族に話したことを忘れ同じことを話す。 | ときどき伝達できる | この特記では選択肢の判断ができません。 |
こちらが言ったことを理解してもらえなかったり、本人が何を言っているのか判らない時があるとの家族談 | ときどき伝達できる | 状況によってはできない時があるので選択肢は妥当と思います。 |
サ高住に住み、家族や職員への意思の伝達は可能だが、その内容は限定されている。 | ときどき伝達できる | 相手によって出来ない時があり、且つ内容が限定されている場合は「ほとんど伝達出来ない」に該当します。 |
大変な状況でも「困ったことがない」と言う時がある。 | ときどき伝達できる | 「事実と違うことを言う」状況を評価・選択しているようです。伝える内容に制限がなければ、事実と違っても「伝達できる」に該当します。 |
簡単な質問には答えられるが、複雑なことには答えられない。 | ときどき伝達できる | 伝える内容に制限がある、状況によってはできない時がある場合の妥当な評価です。 |
失語症で、「はい」「いいえ」で答えられる質問には首を振る動作で伝達する。 | ほとんど伝達できない | できる時と出来ない時があると評価するケースで、「時々できる」に該当すると思います。 |
尿意の訴え以外に意思表示が殆どなく、声がけと意思確認が必要 | ほとんど伝達できない | 自発的に話すかは含まれませんが、このケースの場合は、①いつも伝えられ状態ではない②伝える内容に制限がある状態ですから「ほとんど伝達できない」に該当すると思います。 |
自発語が殆どなく、「痛い」「~したい」などの訴えもない。 | ほとんど伝達できない | この特記内容では「できない」と評価すべきと考えます。 |