話題|認定審査会簡素化率を実際に調べてみた

 

1.認定審査会簡素化の概略

当サイトのコナーの一つ“話題”でも何度か取り上げていますが、認定審査会の簡素化とは、「状態の安定している対象者は、調査結果から要介護度が変わっていない可能性が高いので、認定審査会の2次判定の手続きを簡素化」するというものです。

具体的には、簡素化対象となる要件に合致した認定申請について、コンピューターの1次判定の要介護度を審査会での審査なしに2次判定結果とするものです。

・簡素化対象となる6つの要件

(1)第1号被保険者であること
(2)更新申請であること
(3)一次判定における要介護度が前回認定結果の要介護度と同一であること
(4)現在の認定有効期間が12ヶ月以上であること
(5)一次判定における要介護度が「要支援2」または「要介護1」である場合、状態の安定性判定が「不安定」でないこと
(6)一次判定における要介護認定等基準時間が、一段高い要介護度から3分以内でないこと

2.厚労省から出ている要介護認定結果のデータ

①2次判定結果が1次判定のままなのは全調査の83%
新規、区分変更、更新申請全ての要介護認定調査について、認定調査と主治医意見書をもとにコンピューターで判定された1次判定結果(要介護度)が、審査会を経てそのまま変わらずに要介護認定となる割合は83・3%となっています。(介護保険部会資料 H28年9月)

② 1次判定が変更ならずに要介護認定なったケースの更新申請では45.5%が前回の介護度と変わらず
2次判定結果が変わらなかった 83.3%のケースについて、6~24か月後に更新申請で要介護認定調査を行った結果、1次判定が前回調査時の要介護度と変わらなかったケースは 45.5%であったそうです。

さらにこの 45.5%のケースについて、前回同様に2次判定結果が1次判定のままであった割合は96%であったとの調査結果が出ています。

3.私が担当した更新申請数と簡素化の割合

私が複数の市から認定調査依頼を受けた過去2年間の更新申請のうち、前々回の介護度がわかるのは210件でした。そして、このうち簡素化対象は56件で、実際に簡素化されたのは50件でした。

まとめると次のようになります。

①簡素化対象者率:26.6%

②簡素化対象者の簡素化実施率:89.2%

下記は厚労省が出しているデータです

この表では、簡素化対象者率は28.6%~31.4%で、概ね私の場合と合致しています。

一方、簡素化実施率は厚労省データでは36~44%であるのに対し、私が知り得たデータでは89.2%と大きく異なっています。これは私が知り得た認定情報の中には「簡素化対象者」と言う名称がなく、「簡素化除外:除外する・除外しない」「簡素化可能:可能・不可」とあるのみで、簡素化対象者のカウント方法が違う可能性があります。

4.簡素化対象に該当しない主な理由

更新申請であるにもかかわらず簡素化の対象にならない理由は大きく分けて3つでした。

①前回と今回の介護度が異なる
②前回の申請が新規申請のため前回の要介護度データがない
③簡素化対象要件である[一次判定における要介護度が「要支援2」または「要介護1」である場合、状態の安定性判定が「不安定」でないこと]に抵触している

厚労省から公表されている簡素化を実施している保険者は全国の約40%とされています。その保険者の更新申請では約1/4に簡素化が実施され、その多くが審査会委員への認定資料の事前配布なしとなっている状況です。

私たちの特記事項が、審査会ひいては要介護度に適切に反映されることを願うばかりです。

関連記事
話題:2023年6月 介護認定審査会の簡素化の近況
話題:2021年8月 介護認定審査会簡素化の状況
話題:2018年8月 要介護認定制度の見直し