認定調査項目を読み解く|感情が不安定・昼夜逆転
4-3感情が不安定
1.項目の定義
「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動とは、悲しみや不安等により涙ぐむ、感情的にうめく等の状況が不自然なほど持続したり、あるいはそぐわない場面や状況で突然 笑い出す、怒り出す等、場面や目的から見て不適当な行動のことです。
2.選択肢の選択基準
3.選択の際の留意点
元々感情の起伏が大きい、感情的になりやすい性格の場合は含まれませんが、認知症によってそれがより顕著になり、場面や目的にそぐわない場合はその限りではありません。あくまでも不適切な行動であるかで判断します。
意欲が低下してうつ状態になったり逆に攻撃的になる、また感情のコントロールができず、ちょっとしたことで怒ったり泣いたりする場合なども該当します。
4.ポイント
認知症に伴う周辺症状(BPSD)か否かの判断がつかない場合であっても、当該行動があったかどうかで判断します。
その行動が「場面にそぐわない」「度を越している」「必要以上に長く続く」「唐突に行動する」場合などが該当します。
5.判断に迷うケースの選択肢と選択理由
ケース | 選択肢 | 選択理由 |
---|---|---|
環境変化や対人関係のストレス等をきっかけに感情不安定を来しやすいが、介護者が事前に告知や、説明をすることでここ1 か月間は感情不安定は見られていない | ない | 対応をとることで感情が不安定になることが過去1か月間でない場合は「ない」を選択し、それに伴う介護の手間を特記事項に記載する |
麻痺した足が痛いと大きな声を出したり興奮したりすることが週に1 ~2 回ある | ない | 症状に対しての反応や訴えはさまざまであり、この場合は場面にそぐわない不適切な行動とは言えない |
夫との2 人暮らしで、一人でいると不安になり、夫が外出して予定時間に帰らないとパニックになる。そのため夫は一人での外出ができない | 時々ある | 特殊な状況ではないにもかかわらず、不安によってパニックになる状態は度を越していると判断する |
入院期間が長くなりテーブルの席等にこだわりがある。席は固定になっていないが、いつもの席に他の患者が座っていると怒って相手とトラブルになることが月に2 ~ 3 回ある | 時々ある | 易怒性があり、そのことで他者とトラブルになるような状態は度を越しており、場面から見て不適切と判断する |
うつ状態の診断あり。現在の自分の身体状況が受容できず、ひどく落ち込み、泣いていることが毎日ある | ある | うつ症状か認知症による症状かの判断は困難であり、気分の落ち込みが度を越していると判断し選択する |
施設入所中で、一人の時や他の入所者と交流している時に突然笑い出すことが週に2 ~ 3 回ある | ある | 場面にそぐわない唐突な行動は該当する |
4-4昼夜逆転
1.項目の定義
「昼夜の逆転がある」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「昼夜の逆転がある」行動とは、夜間に何度も目覚めることがあり、そのために疲労や眠気があり日中に活動できない、もしくは昼と夜の生活が逆転し、通常、日中行われる行為を夜間行っている等の状況をいいます。
2.選択肢の選択基準
3.選択の際の留意点
環境や生活習慣から夜眠れない、単に眠らない場合は該当しません。
夜間の不眠が対象者の日中の行動に影響しているか否かで評価しますが、対象者の日中の行動に明らかな影響がないと思われる場合でも、生活状況が昼と夜が逆転していると判断できる場合は該当します。
認知症の周辺症状として評価する項目であり、トイレに頻繁に起きる、痛みがある等で熟睡できない場合は日中の行動に影響があっても該当しません。
4.ポイント
睡眠障害、不眠の有無を評価します。
その程度には幅があるために、該当する行為は「日中行われる行為を夜間行っており、そのために日中の活動に支障がある」との判断基準を設けています。また、夜間行っている行為が周囲に対し迷惑行為であるか否かは問いません。
5.判断に迷うケースの選択肢と選択理由
ケース | 選択肢 | 選択理由 |
---|---|---|
視力障害があり明暗が何とか判る状態。ベッド上生活で、昼夜を問わず介護者に「今何時だ?」と聞いてくる。夜間に行動を起こすことはないが、日中はほとんど寝ており食事のたびに起こす必要がある | ない | 視覚的に時間の感覚に乏しい状態であって、昼と夜の生活が逆転しているとは言えない |
夜間頻尿で夜中に何度もトイレに行くため熟睡できない。そのため翌日は眠気が強くて起きられず、食事を食べなかったり、食事時間が家族とずれたりしている | ない | 夜間の不眠が日中の行動に影響しているが、場面や目的から見て昼夜逆転に該当しない |
夜11時過ぎでも自室で横になってTVを観ていたり、夜中にテレビを点けたままで寝ている時が月に2~3回ある。そして日中も寝ていることがある。家族の話では、日頃は9時頃には寝ているとの事。 | 時々ある | 以前からの習慣ではなく、不眠があり日中の活動への影響もある場合は該当する。特に対応が必要でない場合は、そのことを特記事項に記載する。 |
夜の寝つきが悪く、どうしても眠れずに月に2 ~ 3 回夜中に眠剤を服用する。服用後は眠れるが、服用した翌日の午前中は眠気が強くて活動できない | 時々ある | 眠剤服用のいかんにかかわらず、夜間不眠であることと翌日活動できない状態の場合は該当する |
眠剤を常用している。20 時過ぎに眠るが夜中2 時ごろに目覚めてしまい、それからお菓子を食べたりテレを見たりして過ごす毎日。翌日の日中はほとんど寝ている | ある | 中途覚醒による昼夜逆転と考える |
いつも夜間眠れずに起きており、部屋の電灯を点けベッド上でアルバムを見たり服をたたんだりしている。午前中はいつも寝ており、介護者が声をかけても起きない | ある | 夜間不眠の行動が周囲の手間になっていない場合でも、不眠があり、対象者の日中の行動に影響している場合は該当する |
施設入所中。 意思疎通が困難でベッド上生活。日頃から昼夜を問わずうなり声をあげたり泣き声を出したりしている。 | ある | 昼夜逆転というよりも睡眠覚醒リズムが崩れて昼夜の区別がついていない状態だが、この場合も昼夜逆転に該当すると考える。 |
次回は「しつこく同じ話をする」「大声を出す」の項目を読み解きます。