話題|特記に求められる”簡潔な記載”とはどのようなものか?
特記に求められるもの
高齢化や介護サービス利用者の増加に伴い、保険者の要介護認定業務に関する事務作業は膨大となり、この負担を減らすために、全国的には認定審査の簡素化や認定有効期間の延長、保険者単位ではタブレット端末を使った審査会やデジタル化によるペーパーレスなどの対応がとられています。
しかし、認定審査会で短時間に多くの事例判定を行う状況は変わっていません。
このために、保険者は特記事項は要点を簡潔に記載して出来るだけ1枚にまとめるように求めています。
言うまでもなく、特記事項は認定審査会で「調査項目の選択根拠の確認」と「介護の手間と頻度」の2つの視点で活用され、これを基に1次判定の修正・確定を行うとともに、2次判定で要介護度の変更が行われる場合もあります。(この場合は主治医意見書も活用されます。)
よく指摘されることとして、介助の方法の評価項目で、頻度で選択した場合や選択基準に含まれない介護が行われている場合に「介護されていない」を選択し、特記に実際に行われている介助の記載がない。また、精神・行動障害の有無の評価項目で「ある」を選択して、発生している介助の記載がないケースがあり、その結果いずれの場合も認定審査会の2次判定で介護の手間にかかる審査判定は行われません。
これでわかるように、求められる特記は介助の手間を記載しつつ、限られたスペース内に必要な情報を収めることです。そして、簡潔な記載とは、選択肢に繋がらない内容や介護の手間とは言えない不必要な記載を省くことと言えます。
今回は概況や項目群ごとに、気をつけたい特記記載を具体的に挙げていきたいと思います。
基本調査での特記記載の問題点
<概況の記載>
問題点:概況欄に介護の手間や認知症の症状などを細かく記載している。
概況は、家族状況や住環境、治療中の疾患、利用している介護サービス、使用している福祉用具などを記載するものです。ポイントは「概況に記載していることで認定審査会での介護の手間の判定は行われない」という事です。
介護の手間の判定は主治医意見書と特記事項で行うことになっていますので、概況に家族関係や介護の手間などの細かい記載は不要です。
具体的な介護の手間は各項目の特記事項に記載します。
<能力で評価する項目の特記記載>
問題点:第1群の項目で、選択理由を必要以上に細かく説明している。また、介護の手間や過去の出来事などの記載をするために、2群の介助の方法と特記が重複している。
良く見られるのは「歩行」「寝がえり」項目などの記載です。「何かにつかまればできる」や「できない」を選択した場合に選択理由や状況を細かく記載したり、介助の状況、転倒歴などを記載しているケースです。
この他に、歩行・寝返りなどの1群の項目は2群の移乗や移動項目に関連するものが多いので、介護の手間については介助の方法の項目に記載します。なお、関連する項目がない場合はこの限りではありません。
<介助の方法で評価する項目の特記記載>
問題点:①介護の手間ではなく、状況や経過を詳しく説明している。
②介助が必要な理由を詳しく説明している。
③介助の方法ではなく、第4群に該当する行為の有無を記載し4群の特記と重複している。
①でよく見られるのは食事摂取や排泄などで、状況は詳しく記載されているが、それに関する介助について記載がない。また、”一連の行為”として説明できることを一つ一つ細かく説明したり、便秘傾向とか下剤の調整をしているなど選択肢や介護の手間とは言えないような説明をしているケース。
②で多いのは移動の状況の説明で、目的の場所が判らない、転倒歴があることなど、介護の手間以外のことを詳しく説明しているケース。
③で多いのは移乗、移動の項目で、車椅子のブレーキをかけない、転倒歴があるのに一人で歩き出すなどの説明をしているケース。
<有無で評価する項目の記載>
問題点:①対象者と介護者のやり取りを「 」の形でそのまま記載する。
②「時々ある」「ある」を記載して、それを立証するエピソードを記載する。
①でよく見られるのは、4群「被害的」「作話」などで、対象者の発言や対象者と家族のやり取りを抜粋ではなくそのまま会話の形で記載しているケース。
②で見られるのは、4群「作話」などで、対象者の発言を記載し、次に実際の状況を記載し、対象 者の発言が事実でないことを証明するための記載をしているケース。
この場合は、調査員が聞き取りして判断・選択した結果なので「実際と違う話をする」の記載だけで良いと思います。
特記記載の基本
簡潔で判りやすい特記は、一般的な報告書と同じで、次のような順序で内容を記載するべきと考えます。
結論
(現在の状況・介護の手間)
↓
選択理由
(他の項目との整合性をとるため・介護の状況が不適切な状態か否かの判断理由)
↓
経過
(現在の状況に至った経過・長期的に見た介護の手間)
記載スペースに限りがあり、この3つが記載できなければ、後ろのほうから省いていくことになります。
特記の充実と簡潔な記載は相反するところがありますが、内容を吟味し、表現を工夫して認定審査会に必要な情報を届けることは、審査会事務局からの照会が減ることに繋がります。