話題|認定審査会委員テキストから読み解く特記の書き方
「介護認定審査会委員テキスト」から読み解く、特記事項に記載するべき内容
介護認定審査会委員の主な業務は一次判定の修正・確定と介護の手間にかかる審査判定ですが、今回は、この中の「介護の手間にかかる審査判定」の対象となる特記事項の記載について、認定審査会委員テキストではどのように書かれてあるかを、具体例を交えて紹介します。
介護認定審査会委員には、認定調査員が使用する「認定調査員テキスト」と同様の「介護認定審査会委員テキスト」があり、これは厚労省のHPからダウンロードできます。このテキストには審査会委員としての基本的な考え方や判定基準などが記載されています。
このテキストの中に、「審査判定手順」の項目があり、介護の手間にかかる審査判定の基本的な考え方や審査のポイントなどが記載してあります。
今回は、「審査判定手順」にある「介護の手間にかかる審査判定での“一次判定変更の理由にならない事項”」を読み解き、認定調査員としての特記事項記載ポイントを探ってみたいと思います。
<介護認定審査会委員テキスト>
一次判定変更の理由にならない事項
なお、記載の文章はテキストの原文のままで、例はこちらで追加したものです。
1. 既に一次判定結果に含まれている認定調査項目と主治医意見書の内容
「排泄が一部介助である」、「歩行ができない」等、すでに基本調査で把握されている内容は一次判定に加味されているため変更の理由とすることはできません。ただし、通常の例に比べより介護の手間を多く要する(少なくてすむ)と考えられる内容については、特記事項または主治医意見書の記載をもとに、二次判定(介護の手間にかかる審査)で評価することができます。
既に基本調査で把握された内容以外の特記とは
<例>
・頻度で判断した場合の、頻度の少ない介助の方法についての記載
・「一部介助」「全介助」を選択した場合でも、定義に記載された以上の手間がある場合の記載
・実際に行われている介助の方法を不適切と判断していない場合
2.特記事項・主治医意見書に具体的記載がない(根拠のない)事項
「認知症があるので手間がかかる」等の介護の手間が具体的に記載されていない情報を理由に変更することはできません。変更を行なう場合は、具体的にどのような手間が生じているのかを特記事項または主治医意見書から明らかにする必要があります。
<例>
・抽象的であったり、個別の具体的な手間や介護に要する時間などの記載がない
・BPSD関連で介護の手間の記載がない
3.介護の手間にかかる時間とは直接的に関係ない事項
高齢であることや、時間を要するとの記載だけを理由に、変更することはできません。ただし、例えば、高齢であることによって、コンピューターでは反映できない介護の手間が具体的に発生している場合に、それを明らかにした上での変更は可能です。
<例>
・概況には手間がかかる状況の記載があるが、項目の特記事項には具体的な介護の手間の記載がない
4.住環境や介護者の有無
施設・在宅の別、住宅環境、介護者の有無を変更の理由にはできません。ただし住環境等が原因でコンピューターでは反映できない、介護の手間が具体的に発生している場合に、それを明らかにした上での変更は可能です。住環境などを概況調査で確認しつつ、具体的な介護の手間を特記事項で確認することで、状況をより正確に把握できる場合があります(エレベータのないマンションの4 階に居住する高齢者が外出に一定の介助が発生している場合など)。
<例>
・頻度の少ない外出時の移動の手間の記載がない
・自室が2階にあるが一人では階段昇降が出来ない、または階段昇降を諦めているなどの記載がない
・自宅前の道路の交通量が多い、自宅近くに大きな川がある、このような状況のため、対象者が外に出ないか目が離せない状況の記載がない
・現在の状況または実際に行われている介助の方法を不適切と判断していない場合
5.本人の希望、現在受けているサービスの状況
本人の希望、現在受けているサービスは、申請者の心身の状況及び介護の手間と直接関係があるものではないため、一次判定の変更理由とすることはできません。
<例>
独居で、身の周りの事も出来なくなってきており、県外に住む息子は施設入所を希望している
6.過去の審査判定資料及び判定結果
要介護認定は現在の状態に基づいて判定を行う制度であることから、過去の申請結果との比較を理由として変更を行うことは適切ではありません。過去の判定結果を理由に変更することは、更新申請の申請者と新規申請の申請者で異なる判断基準を設けることになり、公平性を欠いた判定となることに留意する必要があります。
ただし、前回の要介護度と著しく異なる結果が一次判定で示されている場合などに、前回要介護度の判定理由や、入院歴等を確認すること自体は、問題ありません。(有効期間等を検討する際の参考になることがあります)
<例>
・現在は見られていない過去の認知症の周辺症状の記載
・独居で、以前脱水や熱中症で入院したことがあるなどの記載
一次判定変更の理由になり得る事項について
1.一定期間外で評価の対象ではないが、繰り返し起こしている身体状況や認知症の周辺症状、それに伴う介護の手間
2.主治医意見書の「特記すべき事項」に介護の手間に影響を及ぼす疾病の状況などの記載がある場合
<まとめ>
一次判定がそのまま最終的な判定となる確率は83%以上と言われており、一次判定が変更になる確率は高くありませんが、認定審査会委員は特記事項の何を見てどのように判定するのか、結果として調査員は特記事項に何を記載すれば良いのかの参考にはなると思います。