話題|認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準は?
認知症高齢者の日常生活自立度は要介護度や介護報酬に影響する
認定調査員テキストに「認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準」「見られる症状・行動の例」が載っていますが、ランクⅡに該当するのかランクⅢに該当するのか迷う方も多いのではないでしょうか?
ランクⅢの場合は障害高齢者の日常生活自立度によって認知症加算の対象になり得るので、ランクⅡとⅢでは1次判定に違いがでる場合があります。
介護現場での介護報酬でも、通所サービスやグループホームを対象に「認知症加算」があります。そしてその対象は、主治医意見書に記載された「日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ、M」に該当する者になりますが、もし主治医意見書に認知症高齢者日常生活自立度の記載がない場合は認定調査員の判定を使用することになっています。
私は「障害高齢者の日常生活自立度」と「認知症高齢者の日常生活自立度」の判定に悩まないようにオリジナルのフローチャートを作り判定に使用しています。
このフローチャートは私の著書にも載っていますが、最近の修正の必要性を感じており、そして、この著書の第2作を見据え、次回発刊する時は現在よりも使い易いものを載せたいと思っておりました。そのために、日ごろ認定調査依頼の際に見せていただく認定情報の「認知症高齢者の日常生活自立度」の選択肢と特記を約1年間メモして残し、調査員の方々の判定基準を参考にさせていただいていました。
この度、ある程度の量の情報が溜まり、それをもとに新しい「認知症高齢者の日常生活自立度判定フローチャート」が完成しました。
まだ手書きなので公開することはできませんが、今回、今までの記録を元に調査員の方々が自立度ランクをどのような基準で判定しているかをまとめましたので、興味のある方は参考にしてみてください。
なお、判定基準一覧の判定基準については、認知症高齢者の日常生活自立度の特記のみを対象にし、その特記に記載頻度が多かったものから①→⑤の順番で記載しています。
認定調査員が「認知症高齢者の日常生活自立度」の判定基準としているポイント5
判定 | 判定基準 |
---|---|
Ⅰ | ①年齢相応の物忘れのみ ②特別なことの決定には家族の介入が必要 ③日付や曜日が判らないが日常生活は自立 ④もの忘れはあるが日常生活は自立 ⑤感情不安定はあるが社会的には自立 |
Ⅱa | ①金銭・服薬管理に介助が必要 ②記憶力低下があり、新しいことが理解できない ③記憶と理解力低下がある ④意欲低下と管理面の介助が必要 ⑤物忘れと同じ話の繰り返しがある |
Ⅱb | ①金銭・服薬管理に介助が必要 ②物忘れがあり管理面に介助が必要 ③短期記憶低下と理解力低下 ④物忘れが日常的にある ⑤短期記憶低下 |
Ⅲa | ①短期記憶と理解力低下があり、服薬と金銭管理に介助が必要 ②更衣、排泄に介助が必要 ③意思疎通に支障があり、日常生活全般に介助が必要 ④危険な行動や勝手な行動があり対応が必要 ⑤日常生活全般に介助が必要 |
Ⅲb | ①昼夜逆転や帰宅願望があり、昼夜の見守りが必要 ②昼夜逆転と不潔行為がある ③徘徊が早朝から夜中まである ④更衣・排泄に介助が必要で、不潔行為がある ⑤意思疎通に支障があり金銭・服薬管理ができない |
Ⅳ | ①意思疎通困難 ②車椅子から立ち上がろうとして目が離せない ③ADL全介助 ④不穏があり常時の見守りが必要 ⑤日常生活に支障をきたす行動があり、意思疎通に支障がある |
M | ①帰宅欲求があり常に見守りが必要 ②専門医を受診している |
まとめ
1.ランクⅠは、日常生活はほぼ自立で「年齢相応の物忘れがある」としたケースが圧倒的に多い。
2.ランクⅡaとⅡbの判定理由に違いはなく、家庭外・家庭内と区別している記載はない。Ⅱa・Ⅱbいずれの場合も判定理由で最も多いのは「服薬と金銭管理に介助が必要」であり、次に多いのは「短期記憶が出来ない」であった。
3.ランクⅡとⅢaの判定理由の解釈はバラバラで、同じ特記内容でⅡを選択する方もいればⅢaを選択する方もいる状況。そして、いずれの場合も「服薬と金銭管理に介助が必要」をあげているケースが最も多い。半面、食事・更衣・排泄に介助が必要な場合は全員ランクⅢを選択しており、この点の解釈のばらつきはなかった。
4.ランクⅢaとⅢbの違いは症状や行動が見られる時間帯だが、この点は判定基準に沿った特記記載であった。
5.ランクⅣは「意思疎通が困難」を判定理由にあげている場合が最も多かった。
6.ランクMは著しい精神症状や問題行動があって専門医療を必要とする場合が該当するが、症状や問題行動での判断ではなく、精神科医を受診していることを理由に選択しているケースがあった。
7.特記事項には判定した理由の具体的な記載がなく、「判定理由は1∼6群の全体の特記を見れば明らか」とするようなケースがあった。この様なケースでは審査会事務局の負担が大きいであろうと推察した。
なお、フローチャートは11月に日本実業出版社から発売予定の著書 「要介護認定調査の評価・判断ポイントがわかる本」 に掲載されています。是非御一読ください。
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