話題|調査項目にない家事援助を基本調査にどう反映させるか
施設職員の不満
私は昨年末にケアハウス介護型に入居している方(Aさん、男性)の訪問認定調査を行いました。
そしてその3か月後に同施設の別の方の認定調査に伺った際、Aさんの調査に同席してくれた支援相談員の方に声をかけられました。
支援相談員の方は「この前の認定調査でAさんの要介護度が下がって要支援1でした。確かに本人のADLは自立していて介助の手間は少ないけれど、要支援1は納得がいかない」との事でした。
その支援相談員の方の話では、「Aさんは身体機能に問題はなく認知症の診断もないが、面倒くさがりで洗濯や掃除、ゴミ出しなどを自発的にやらないので私たちが声掛けしたり手伝ったりして何とか生活できている状態。私たちが係わらないと汚れた服を着続けて臭ったり、部屋に物が散乱していたリ、生ゴミなどを捨てないために部屋からごみの臭いがするといった苦情が来る。そんな状態の方が要支援1というの納得いかない」と言うことでした。
そして認定情報を取り寄せて確認したが、各項目の選択肢と特記事項の内容は妥当なものだったと話をされました。
色々聞いていくと「私たちが行っている生活指導や家事援助は認定調査では評価されないの?」というのが彼女の不満の核心だったようです。
そこで今回は「調査項目にない家事援助を評価する方法」について考えてみたいと思います。
代表的な家事援助
一般的な家事援助項目は、ケアマネージャーがケアプラン作成の際に行うアセスメントのIADL能力評価項目になります。
1.日常生活に必要な手段的生活動作(IADL)
IADLの代表的なものは以下の通りです。
①調理
②洗濯
③買い物
④掃除
⑤片付け
⑥金銭管理
⑦服薬管理
⑧電話の使用
⑨交通手段(バスや電車)の利用
調査項目に含まれるもの:①③⑥⑦→5群「社会生活への適応」で評価、⑨→2群「外出頻度」、「障害高齢者の日常生活自立度」で評価
調査項目に含まれないもの:②④⑤⑧
2.家事援助の要介護認定等基準時間
IADL①~⑨に対する援助は間接援助であり、要介護認定の判定基準となる「要介護認定等基準時間」の樹形モデルでは「間接生活介助」に分類されるものです。
下の図表は間接生活援助の要介護認定等基準時間と樹形モデルに関する認定審査会委員テキストの記載です。
図表12では、間接生活介助に該当する行為は「洗濯、掃除等の家事援助等」となっていますが、認定調査項目には洗濯、掃除の家事援助を評価する項目はありません。
また、図表35にある「時間の表示範囲」を見ると、間接生活介助は直接生活介助に比べて要介護認定等基準時間の表示範囲が狭く、これは直接生活介助項目などに比べて介護の手間が少なく設定されていることを意味します。
この点は、直接生活介助が毎日行われている事と個別対応であるのに対し、間接生活介助は必ずしも毎日は行われていない事と同居家族がいればついでに行う場合もある事から納得がいきます。
とはいえ、独居の方の場合は家族が間接生活介助のために通ったり、また施設入所者の場合は個別対応になり、介護の手間は決して少ないとは言えません。
洗濯や掃除などはむしろ5群の項目にある金銭管理や買い物と比較して介助の手間が多い場合があります。
このように調査項目にある金銭管理や買い物に比べ、より介護の手間になっている⑧電話の使用を除く、②洗濯④掃除⑤片付けを基本調査項目に反映させるにはどうすべきか考えてみたいと思います。
洗濯、掃除、片付けを基本調査項目に反映させるには
–洗濯–
関連項目:2-10・11上衣ズボンの着脱
項目の定義に該当しないので、同じものを着続ける、洗濯しないなどの具体的な状況を特記事項に記載するだけになります。
関連項目:5-3日常の意思決定
清潔保持のために必要な事が出来ない、自分の身の周りのことについて妥当に意思決定ができないなどを記載して選択理由にします。
–掃除–
関連項目:5-3日常の意思決定
清潔保持のために必要な事が出来ない、自分の身の周りのことについて妥当に意思決定ができない状況を記載して選択理由にします。
–片付け–
関連項目:5-6簡単な調理(調理に関する片付けの場合)
項目の定義に該当しないので具体的な状況を特記事項に記載するだけになります。
関連項目:5-3日常の意思決定
転倒防止や清潔保持のために必要な事が出来ない、自分の身の周りのことについて妥当に意思決定ができないなどを記載して選択理由にします。
概況調査欄に状況を記載する
この他に、概況調査の中の「家族状況、住居環境」などを記載する欄に、「自立的な生活が出来ないために洗濯や掃除などの家事援助が行われ、それで何とか生活が維持出来ている状態である」などの具体的な状況を記載するようにしましょう。
概況は審査会委員が対象者のアウトラインを把握するために必ず目を通しますから、項目の特記よりもアピール効果があると思われます。
まとめ
1.要介護認定の1次判定ソフトの説明には、洗濯・掃除などの家事援助行為を間接生活援助として要介護認定等基準時間の算出に使用しているとあるが実際にはその項目はない。
2.要介護度を判定する要介護認定等基準時間は、元々直接生活介助よりも間接生活介助のほうが少なく設定されている。
3.掃除・洗濯・片付けの介助そのものを評価する項目がないので、関連する項目(上衣ズボンの着脱、簡単な調理など)の特記に具体的な手間を記載する。
4.5-3日常の意思決定で評価する。
5.概況調査欄に家事援助が必要な状況を記載する。
確実に1次判定に反映させるには、多少定義から外れていても基本調査項目で評価したいところですが、掃除、洗濯、片付けに関しては基本調査項目での評価が出来ません。
2次判定で評価されるように、概況または特記に具体的な介護の手間を記載しましょう。